1.初監督作品とは思えないほど監督としての奥田瑛二は、老練な職人の如くその手腕を遺憾なく発揮している。それ程、この作品を映画化するには深い思い入れと執念があったと言うことだろう。ただ多くの入浴シーンや衣服ごと水に濡れたり、あるいは汗まみれの素肌といった、本来官能的なシーンが何か爽やかさの印象が強いのも、彼の生真面目さによるものだろうか。共演者では、これが映画初出演とはとても思えない少女・陽子役の小沢まゆと、その兄・助政役の小路晃が強烈な存在感をみせている。そしてその母親役の夏木マリがさらにいかにもベテランらしい凄みのある演技で画面を引き締めている。