2.もしもトラヴィスがNYのタクシードライバーではなく、東京のサラリーマンだったら?ってな感じの映画ですかね。私も『タクシードライバー』はメチャクチャ好きな映画なんですけども、そういった映画が今のサブカルチャー台頭の一因になっとる訳で、サブカルチャーが「ブーム」になってしまってはもう形骸化をたどるのみ。例えば「狂気」=「かっこいい」なんぞという陳腐な公式がまかり通って陳腐な「自称:問題作」が量産され、似非「サブカルチャー」が世の中蔓延している・・・。そういう状況を、本作はよく認識し、一線を画しているように思います。「狂気⇔正気」「カッコイイ⇔ダサい」「綺麗⇔汚い」etc...なんて、本来は次元の異なるものであり、条件反射的に定式化しちゃいけない。これら異質なモノが異質な邂逅を繰り広げることで初めて、未知の衝撃が現出するわけで。『タクシードライバー』が確かにひとつの到達点であることは、ボクも絶対譲りゃしないけども、やはりトラヴィスとボクらの間には時代文化背景その他の違いによる「距離」があるのも否定できない。本作の主人公もまた、トラヴィスにはなれない(当然ながら「鉄男」にだってなれない)わけで、そのもどかしさを加味しつつ独自のアングラ世界を築きあげた本作にも拍手を贈りたいですね。ユラユラゆれるカメラによる、幻のようでありながら現実感のある薄暗い世界。眩暈に耐えつつ堪能いたしましょう。そうそう、そういえば、撮影協力に「東京大学駒場寮委員会」ってクレジットされてましたね(寮の自治会のことかな?)。東京でもっともアングラ的なロケ場所はやはりコマ寮だったのか?妙に納得・・・。