1.父をなくし貧しい暮らしの南部イタリアから長男のいるミラノに母子5人がやってくる。息子達5人の中で話の核となるのは2男のシモーネと3男のロッコ。イタリアの家族、特に南部は結束が固いというがこの家族も母を中心にまとまっている。しかし善良だったというシモーネは堕落し家族に迷惑をかけるようになる。ロッコはそんな兄の尻拭いをしどこまでも寛容でやさしい。一方薄幸な娼婦のナディアが彼の善良さで立ち直りかけたのに、彼女が兄には必要だというので身を引いてしまい彼女を絶望させ最悪の結末になってしまう。思うにこれほどの寛容はやさしさではなく甘えを許して益々当人を堕落させるだけだとじれったい。堅実・真面目で夜学に通い自動車会社に就職できた4男のチーロは常識派で、そんなロッコのことを「聖人だけど俗世界では無力だ。全てを許してしまうが許してはいけないこともある」と言うが、彼の言うラストのこの言葉や「家の基礎を固めるためには犠牲が必要なんだ」(この場合シモーネ)というような言葉が暗いこの話の中で印象的。貧しい兄弟・家族等の生き方や変遷をリアルに見せ、ニーノ・ロータの静かな音楽と共に重い余韻を残す。デビュー間もない美しいA・ドロンが天使のようにやさしく善良な青年でとても魅力的。他レナート・サルバトーリ、アニー・ジラルドなどみな見ごたえがある。