3.座頭市というと、この映画が初体験でしたので、最も印象が強いです。
大映時代からのファンには違和感あるかもしれませんが、自分にとってはこれが座頭市です。
脇役陣も今考えると、クセのある強烈な人が多く、豪華なキャストだったなあと思いますし、今では勝も含めて何人かは故人になってしまい、惜しい方ばかりです。
役者が監督した映画って、抽象的だったり内面的な表現がわかりにくい例が多く、この映画もそういう演出が感じられますが、役になりきっている勝新は「かっこいい」の一言に尽きます。
ストーリーは大味で「役者が役者を見せるために作る」という明確なポリシーを感じます。役者なら誰もが持っているであろうナルシスト的な演出と、観客が観たい役者像が合致すれば、強烈なインパクトを持った映像になるという好例です。
エンドロールを見てて改めて気づいたのが、カメラマンが長沼六男というのも、今考えればすごいことです。
1カット1カットの構図が素晴らしく、風格を感じます。
激しい印象が強いこの映画、激しいシーンでも実はカメラは必要最低限の動きしかしていません。
撮影技術がどれだけ発達しても、この映画の「絵の風格」のようなものは、時代が進むにつれ失われています。
無駄にカメラが動きまくるコケオドシの映像が氾濫している今だから、この「絵の風格」が逆に新鮮に感じられます。