2.この頃の大スターというのは、見た感じ、五頭身くらいしかないので、どこをどのように味わえばこれをカッコイイと感じることができるのかがまだ会得できていないのですが、そんな大スター・片岡千恵蔵が遠山の金さんを演じていて。
悪役が月形龍之介だもんで、金さんと水戸黄門が対決しているようなもんで、そうなるとどうみても千恵蔵金さんの方が分が悪く、こちらの方が悪いヒトに見えてしまう。そんな大スターの、大活躍。
物語はと言うと、佐渡丸の難破事件に端を発し、それを捜査する金さんの前に現れるさまざまな登場人物たち、その中には思わぬヒトが実は思わぬ正体だったりして、話は二転三転、最終的には陰謀が白日の下に晒される、という、同じ船の難破でもヒッチコックの『レベッカ』より数層倍、込み入ったオハナシになってます。
まさにこれぞ、エスピオナージュ。
でもちょいと、やり過ぎ、ですかね。裏の多い物語に対し、見せ場の方が追い付かず、気が付いたら事件が終わっちゃってる、みたいな印象です。演出にやや雑な部分も。
とは言え、例によって群衆シーンなんかは気合いが入っていたりして、さすがは「この頃の」東映、といったところでしょうか。