5.この映画が実話だとは到底信じられない。大部分において大袈裟な脚色はあるのだろう。
ただよくよく考えれば、“フィクション”を「この話は真実だ」ということは自由だと思うし、この光り輝く映画に対して、それが真実かどうかなんてもう関係ないと思わせる。
何を置いても、2人のハリウッド・スターのその演技者としてのバラエティーの豊富さが凄い。
まずは、ジム・キャリー。“嘘つき”でゲイの天才詐欺師という役どころの時点で、彼以上にふさわしいキャスティングはないだろう。
彼自身が切望してこの役を演じたらしく、そのキャリアで培ってきたパフォーマンスの総てを余すことなくぶつけている。
飄々と嘘をつき続け、脱獄を繰り返し、ひたすらに愛する恋人に「愛」を伝え続ける様は、どうしようもなく滑稽で、だからこそ人間そのものの愛くるしさに溢れている。
そもそも人間というものは愚かで、滑稽である。その悲哀を投影することにおいて、今ジム・キャリーより秀でた俳優は居ないように思う。
そして、そのジム・キャリーの暴走的な愛を一身に受け止める“恋人”を演じたユアン・マクレガーも凄い。
風貌はいつものユマン・マクレガーなのに、その目つきと物腰のみで、一途な愛に振り回される“少女”を体現している。
伝説のジェダイ騎士役を経てもなお、イメージに固執されることなく、主人公から悪役、あらゆる脇役までこなす彼のスター俳優としての立ち位置は、ある意味“斬新”だとすら思えてくる。
ストーリー自体は、真実とフィクションの境界線を突っ走るようなキワドさを伴い、不安定さを感じなくはない。
ただし、その危ういストーリーの道程を2人のスター俳優が、堂々と、飄々と走り抜けていく。
すべてがハッピーな映画では決してないけれど、不思議な爽快感と幸福感に溢れた良い映画だと思う。