2.インド映画を観たのは、おそらく15年ぶり。そう、「ムトゥ/踊るマハラジャ」以来だ。
インド映画界の超スターであるラジニカーントが、謳って踊って戦いまくるあの“インド娯楽”の結晶的な映画から15年あまり。再び見たインド娯楽映画の絶対的な主人公が、同じくラジニカーントであることにまず驚く。
この人のインドにおけるスター性は、日本人が想像する以上に絶大で、その生活ぶりはもしかしたら彼の主演映画以上に“とんでもない”のかもしれない。
その片鱗は、現在60歳を超えているとは思えない“肌艶”に表れていると思う。
さて映画はというと、相変わらずのインド娯楽映画ならではのテンポとテンション、濃ゆい演出とカメラワークがこれでもかと並べ立てられた問答無用に楽しい映画だった。
粗や突っ込みどころなどを挙げたらキリはないが、それらは「普通」の映画であれば気になるもので、インド映画で、ラジニカーントの映画であれば、それら全部ひっくるめてエンターテイメントと言っていい。
わけがわからないくらいハチャメチャな娯楽性に彩られた映画ではあるけれど、プロットは極めてオーソドックスで、王道的なSFだったと思う。
天才ロボット博士と彼が生み出した超精巧なロボットの対峙による物語の構図は、往年の手塚治虫のSF漫画を彷彿とさせ、ロボットの悲哀と人間の業、それに伴う混沌と感動をきちんと描けていた。
と、想像以上に“真っ当な”映画という印象が強く残ったのは、僕が鑑賞したバージョンが137分の短縮版だったからかもしれない。
180分に渡る劇場公開の完全版には、更に破天荒で絢爛豪華なダンスシーンがこれでもかとぶち込まれているらしい。
やはり、そちらを観てこそ、インド娯楽映画を「堪能」したと言えるのかもしれないと思うと、悔やまれる。
インド本国公開版は、180分よりも更に更に長い“てんこ盛り”バージョンらしい……。世界は広い。