1.日本侠客伝シリーズ最終作。この頃には監督もマキノ雅弘ではなく、この作品では小沢茂弘がメガホンをとっています。任侠映画の時代も終わりつつあり、いわば実録路線ブーム前夜、といった頃の作品。
日本侠客伝シリーズ開始の翌年に開始した昭和残侠伝シリーズ(ちなみにシリーズ終了も1年遅れ)からの逆輸入といった感じで、今作には池部良が登場し、キャラ的にも昭和残侠伝そのまんまの印象ですが、高倉健との関係の描かれ方はだいぶ異なります。というのも、すでにその道ではひとかどの人物たる池部良に対し、今回の健さんはというと、ボサボサ頭に無精ヒゲのチンピラ風情。
正直、なかなかの違和感です。ちょっと嬉しくなってくるではないですか。
で、やがて物語は、熱血代議士の大木実と、その活動を妨害する圧力団体の渡辺文雄との対立へ。渡辺文雄という人は一見、人の良いオジサンなんですが(いや、これは多分、テレビのバラエティ番組の印象も大きいけど)、こういうイジワルな役ばかりをやってて、確かに、狡猾さみたいなものを強く感じさせます。ちなみに、その部下の一人に、雑魚キャラながら変なカラテ使いみたいなヤツがいるのですが、これは川谷拓三ですね。
文無しの健さんを助ける芸者に、十朱幸代。いやここは藤純子でしょ、という役ですが、残念ながら十朱幸代です。美人ではあるんですけどね、どうしてこんなに残念なんでしょうね。ただ、芸者役とはいってもこの、シロウトっぽさ、イモっぽさみたいなものは、やっぱりこの人ならでは。それに演出の方もあまり彼女の演技力に頼らないような工夫が凝らされていて(笑)、あの海岸のシーンとか、なかなかいい感じ。
物語の後半は、歳月が流れて4年後となり、すると健さんももはやボサボサ頭ではない「ノーマル健さん」として再登場。待ってました!ってなところではあるのですが、あまりにフツーになってしまい、ちょっと残念でもあります。せっかく違う映画を見てたのに、いつも通りの映画をまた見せられるかのような。しかしシリーズなんだから、仕方がない。
という訳で、多少、とってつけたようなクライマックスの殴り込みに至る訳ですが、白い装束がやたらカッコよく、有終の美を飾るのでした。