4.『ワイルド・ワイルド・ウェスト』を筆頭に『カウボーイ&エイリアン』『ジョナ・ヘックス』と、西部劇をベースとしたファンタジーは死屍累々たる有様となっています。本作についても、2002年頃から何度もプロジェクトが持ち上がっては立ち消えになるを繰り返しており、まさにハリウッドの鬼門と化していた企画だったのですが、同じく不採算のジャンルとして知られていた海賊映画を一発当てたチームが、『パイレーツ・オブ・カリビアン』の栄光よ再び!とばかりに挑んだものの、今度は法則には逆らえなかったようです。膨大な製作費や広告宣伝費を回収しきれず1億5,000万ドルもの赤字を計上し、ジェリー・ブラッカイマーは『クリムゾン・タイド』以来のディズニーとの契約を打ち切られるに至りました。。。
脚本は、リアリティとファンタジーの間を終始行ったり来たりして、まったく落ち着きません。オリジナル未見の私にとっては主人公の能力設定すらよくわからず、死から生還したただの男なのか、それとも何か特殊能力を持っているのかすら不明です。それは相棒・トントや愛馬・シルバーについても同様であり、基本設定を観客に伝えるという初歩の初歩ができていないという点は残念でした。また、騎兵隊によるネイティブアメリカンの虐殺や、肉親を殺された者による復讐など、物語は至ってシリアスでありながら、たまに笑わせようとしてくるので、この映画が観客に何を感じ取って欲しいのかを掴みかねました。法を遵守する主人公が私刑の世界へと足を踏み入れる展開についても、「それは倫理的にどうなのか?」と首を傾げざるをえない点が多々あって、総じて語り口に説得力が欠けていると感じました。。。
監督のヴァービンスキーは、『パイレーツ~』シリーズの冗長な演出にはウンザリさせられたものの、その後に撮った『ランゴ』がコンパクトにまとまった佳作だったため、本作についても『ランゴ』同様の手腕を期待したのですが、またしても脚本に引っ張られたダラダラ演出に逆戻りしています。特に中盤は拷問のような退屈さであり、「脚本に書いてあることをそのまま撮ってます」という酷い有様となっています。救いは、序盤とクライマックスのアクションが素晴らしすぎたことであり、ハンス・ズィマーの音楽に合わせた見せ場のテンションやかっこよさは、芸術的な域にまで達していました。点数は、この二つの見せ場に対してのものです。