1.私はDVDなどで“特典”として付くメイキング映像の類が嫌いです。ジャッキー・チェン主演映画のエンドロールで提供されるNG集などもってのほか。観客へのサービスなのは分かりますが、正直いって有難迷惑な話です。物語の世界に浸りたいのに、その裏側を見せられるなんて艶消しもいいところ。そう、私のスタンスは“メイキング映像・NG集”否定派です。ですから、どんなに『幕が上がる』が好きな私でも、本作に高得点を付ける事は無いと考えていました。あくまでもファン向けのオマケ映画であると。ところが、ところがです!本作はももクロが『幕が上がる』を通じて、女優として成長する過程を追ったもの。弱小演劇部が全国大会を目指して成長していく『幕が上がる』の世界感と見事にリンクしていました。艶消しなんて、とんでもない。『幕が上がる』では描き切れていなかった“演技上達の道程”を図らずも補完する内容でありました。平田オリザ氏のワークショップで演技の意味を知り、監督に対して自らの思いを語る姿。5万人のライブでもおどけて見せる彼女たちが『肖像画』で見せた張りつめた表情。『ももドラ』での“なんちゃって女優”ぶりを知る者にとっては、実に感慨深いものがありました。例えるなら寝返りもままならぬ乳飲み子が、ランドセルを背負って駆けて行くまでを目にしたような。あくまで『幕が上がる』があってこその本作ですし、ファンサービス映画であることは否定しません。ですが、このように“本編の世界観を邪魔しないメイキング映画”があることに驚いた次第です。しおりん、れにちゃんの涙、美しかったなあ。夏菜子は、本当に大きくなりました。ももクロにとっても、そしてファンにとっても、『幕が上がる』が大きなターニングポイントであったと再確認することが出来た『その前に。』でありました。