1.マカロニ・ウェスタンの主人公におけるこの「ジャンゴ」率の高さというものは、一体何なんでしょうかね。日本でどの映画会社もめいめい勝手な怪獣映画を作って「ゴジラ」を名乗らせるようなもんだと思うのですが。
本作でジャンゴを演じるは、マカロニ界のスーパー・スター・・・なのかどうなのか、普通に日本に暮らしているとなかなかピンとこないのですが噂によるとどうもそうらしい、アンソニー・ステファン。この面構え、ニヒルと言うべきか、それとも貧相と言うべきか。やっぱピンと来ないなあ。
冒頭いきなり女性が殺害されて、なるほどこれは復讐譚らしい、ということになりますが、その前の幸せな頃を描いてこそ主人公の怒りも伝わろうというところ、さすがはマカロニ、そういうウェットな要素は完全にそぎ落として、痛快娯楽に徹します。主人公自身すらもが、今自分が復讐を果たそうとしていることを、ほとんど忘れ去ってしまっており、ホンの時たま「あ、復讐しなきゃ」と思い出しているような。
そういうテキトー感がいいですね。映画の最初の方で、主人公が、いつ爆発するかわからないダイナマイトを手に、タバコの火を悠然とつける。ここで爆発したら映画がすぐに終わっちゃうので、爆発する訳ないんだけど、観てる我々はそれでも「早く、早く!」とハラハラする。そのムダな余裕は一体何なんだよ、とイライラもする。こういう映画に、ハズレはありません、たぶん。
で、あまり一生懸命復讐する気のない主人公の、一応は復讐が繰り広げられ、ガンファイトが次々に炸裂する訳ですが・・・この映画の最大の見どころは、主人公の「セコさ」です。「二人羽織殺法」とか、「両腕ダミー作戦」とか、敵を倒すことよりも、敵をダマすことばかりに腐心していて、卑怯なことこの上ないんです。アイデア満載、それも小ネタばかり。これぞマカロニ。