1.1992年旧東ドイツのロストックに起きた難民襲撃事件前後を三人の視点で描く。日本ではソフト化されず、映画祭で上映されたのみだが、ネットフリックスで視聴可能な辺り、その恩恵は非常に大きい。監督のブルハン・クルバニはアフガニスタン難民の二世で、ドイツの若者として生きながらも難民としての苦難も経験しており、彼ならではの題材だろう。仕事にあぶれ鬱屈した日々を送るネオナチの青年と、保身と倫理の狭間で揺れ動きうろつくばかりの市会議員の父親、生命の危険から退去するか葛藤するベトナム難民の娘を中心に多角的に描くも、移民反対の理由にもっと踏み込まないと如何に深刻でも「嫌な事件だった」で終わってしまう。さらには終盤の"ある演出"が過剰で安直さに拍車をかける。惨状を伝える映画として、一定のトーンで描いてほしかった。無学の者が大衆迎合の意見に飲み込まれて暴走するさまはいつの時代も同じ。