7.地にはぬかるみ、空には曇天。そのなかの上下から圧迫されているような世界、あるいは廊下の左右から圧迫されている気分。ソ連映画でよく味わう気分、これはロシア人の心象に深く刻まれている気分なのか、単にあちらの気候のリアリズム的反映なのか。近くに収容所があり、やがて主人公も、拘束から何度も逃れていく。よっぱらいの歌・よさこい節・スターリン賛歌・ダンスパーティと歌が多い。この天候と歌とが互いを嘲笑しているようで、そこから滲み出した狂気もあちこちに潜んでいる。みんなここ以外の場所へ行きたい。生活する楽しみが何一つ見いだせない町。しかし外には悪の世界がある。この少年と少女、弟的なものと姉的なものに、男女の原型が感じられた。後半、ガリーヤが「姉」のなかから「女」の気配をのぞかせる。ストーリーとして・あるいは道徳的教訓として要約される前に、このようにしてあった少年と少女の存在感のほうがグーッときて、それに圧倒される。こういう世界がたしかに地球上のある時期に存在した、って。長回し・手持ちカメラのドキュメントタッチの力。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 8点(2010-06-25 11:56:16) |
6.うわー凄い。タイトルもそうだけど精神的エグさも内包した内容にも見事にやられました。まるでドキュメンタリーを見ているかのように市井の人々の生活臭がぷんぷんとする89年作品とは思えないモノクロの映像美。人々の演技も完璧。主役の少年は更生していくのかなという期待をどんどん裏切ってく。幼馴染の少女は愛くるしい。少年を更正させようと努力するのに逆にどんどんアウトローな方向に巻き込まれてく。内容は多分にスターリン主義批判(場合によっては共産主義体制そのものへの批判)までいってしまっている。ペレストロイカ以降じゃなければまず撮影できなかった映画だろう。 【こまごま】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2007-03-26 19:56:52) |
《改行表示》5.主人公のワレルカと魅力的なガリーヤの無垢な姿に感動。 戦争が題材と言うこともあり、ショッキングなシーンの連続でした。 ドキュメンタリーかと思わせるあっという間の展開が印象的です。 重たいけれど目が離せない傑作。 【たんぽぽ】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2007-02-10 21:54:54) |
4.1989年ソ連製作の映画に対して見当違いなことを言うようだが、これは紛れもなくネオ・レアリスモの傑作。いや、まぁそんな必死になって説明する気もないし別に何でもいいんやけどさ。題材としては“大人は判ってくれない”を想起させる。“他人は構ってくれない”のほうがしっくり来るけど。ワレルカ少年は下水にイースト菌入れたり、電車脱線させたりするけど、社会に反抗したかったわけでもないし、迷惑かけたかったわけでもない。ただ無邪気に、この陰鬱とした気持ちを、鬱憤を晴らしたかっただけ。お母さんのことも好きやし、愛されていることも分かっている。戦争も起こっている、銃殺刑も当たり前のように簡単に行われる社会で自分のした事がそんなにも咎められることとは思わなかっただけ。確固とした流れに沿わず、展開の組み合わせでここまで感じさせる手腕は大したもの。特にワレルカとガリーヤの“幼いけれど真実の愛”の芽生え方、描き方はただただ素晴らしい。人々がぎゃーぎゃーまくし立てるのは卑俗で好きになれない演出なのでそこだけマイナス。 【stroheim】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2006-04-16 01:05:33) (良:1票) |
3.物語の時代背景がよく分からないのでちょっと理解し難いところもあったけど、このまるで歯車のネジが吹っ飛んだような異様な雰囲気には終始目が釘付けでした。1989年に撮られたというにも関わらず、まるでこの映画自体が何十年か前にタイムスリップしてしまったような錆び付いた映像にも圧巻。更に監督が八年もの間、無実の罪で投獄されていたという凄まじい経歴の持ち主であることにも妙に納得。ラストシーンから観ても分かるように完全に狂っている映画です。正直「狂っている」の一言で片付けるには勿体無い作品だけど、尋常でないことだけは確かです。恐れ多くも6点。 【かんたーた】さん [ビデオ(字幕)] 6点(2005-08-22 18:47:01) (良:1票) |
2.スターリン政権時代の一人の少年の青春が描かれているのだが、あまりにも救いがない。『大人は判ってくれない』にも似ているけれど、さらに重く、ハードな物語。画面から受ける印象は常に暗く、厚い雲が張った空の下の凍えるような寒さが伝わってくる。少年は一人を除いて誰からも受け入れてもらえず、自分の居場所を見つけることができない。胸を打つのは、それでも彼が健気に現実と戦い、生きていこうとするところだ。神経質な母親は彼を泥棒扱いして殴ったのに、「あんたのママはあんたを愛してるわ」と友達に言われ、「わかってるよ」と答える。スケート靴を盗まれても、取り返してはしゃぎ、笑い転げる。強盗殺人の片棒を担いで顔に返り血を浴びた横顔を見せたときは、さすがにもうだめかと思った。それでも、絶対にへこたれない。その点『大人は…』の主人公よりもずっと強く、頼もしい少年に見えた。ところが、そう思えたのも束の間、唯一の理解者であった少女が殺される。少年はいちおう生きていることが示唆されるが、もう画面に映されることもない。辛い出来事にも負けずに明るく生きようとしていた人間から、最後の希望まで奪いとる現実。たぶん彼は肉体的には生きていても、もうそれまでの彼ではいられないだろう。彼が子供でいられた時代は、銃声で終わった。一人の少年の心が殺されるまでを描いた、悲痛な作品。 また、主人公が強制収容所送りから逃がれようとする女を助けようともせずに見つめている場面も印象的だった。人が人として生きていけなかった時代の、暗鬱な空気。重く哀しく、恐ろしい映画だった。 【no one】さん 8点(2005-02-06 02:37:05) (良:1票) |
1.社会情勢があまりにも悲惨。こんなところで育った子供はどんなになるんのか無用な心配をしてしまった。なんでよさこいがソ連に伝わるのかも謎。 【ぷりんぐるしゅ】さん 3点(2003-12-05 20:47:24) |