《改行表示》20.(2005年、テレビ録画視聴時のレビュー) 1945年の夏、終戦間近の宮崎県・霧島地方。沖縄戦も失敗し、すわ九州に上陸かという切迫した時代を描いている作品です。 太平洋戦争を背景にしながらも、反戦や平和をテーマにしてはいません。あくまで、その時代に必死に生きる人たちを描くことに徹しています。 この作品は、黒木和雄監督の実体験に基づいて作られているとのこと。康夫という少年は架空人物ですが、黒木監督自身の少年時代の姿がかなり色濃く投影されていると思って間違いないでしょう。 実体験に基づいているだけあって、この作品はリアリティに溢れています。可能な限り1945年夏当時の霧島地方そのままの姿を再現するよう、かなり細かいところまでこだわって演出しているらしいです。 言葉や服装や建物、その他諸々のモノが徹底的に忠実に再現されたおかげで、私のような戦争を知らない世代にも、当時の生活の様子がリアルに感じられるのだと思います。 この作品にはメッセージ性はまったくない。だからこそ私は新鮮味を感じました。 少年・康夫を演じている柄本拓という少年は、俳優・柄本明の息子。父親譲りのボヤッとした存在感が、この作品の味かもしれませんね。原田芳雄や石田えり、香川照之といったアクの強い役者たちに囲まれたボヤッとした少年がリアリティを生み出しているのだ、と言ったら言い過ぎかな。 【りょうち】さん [地上波(邦画)] 6点(2021-02-02 01:21:51) |
《改行表示》19.静かな映画。 こんなに静かな戦争映画は見たことない。 いい。 |
18.広島や長崎それに沖縄からも遠く離れた美しい大自然のキリシマ、グラマンが飛んだり竹槍訓練をしていても、戦争に無縁の地に思える。しかし、そこに住む人の心の中には様々な形で戦争が影をなしていた。学徒出陣ながら肺浸潤で仲間に加われなかった少年、密会を重ねる兵士と戦争未亡人?、義足になった男に嫁ぐ娘。やがて終戦、天皇は神様と教えられた人たちはどう受け取ったのだろうか。戦争とは何かを静かに問う。登場人物が多く散漫になりがちで、メッセージが伝わりにくい気もするが・・・。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 6点(2012-08-08 11:25:17) |
17.正直、石田えりさんの濡れ場シーンまでは見続けるのやめようか迷った作品。方言も本格的過ぎて耳に慣れずだったので。でもその濡れ場から色々な展開があり、最後まで観られた。戦争によって死生観を変えざるを得なかった人々のお話。柄本くんがまだ駆け出しで初々しい、が、それが仇となる。もう少しだけ感情を入れてくれたらもう少し良かったかな。 【movie海馬】さん [地上波(邦画)] 5点(2012-07-19 21:49:42) |
16.最初のほうでいきなり萎えたのが照明。屋根からぶらさがる電球や部屋の電気スタンドといった魅力的な光源を無視したライティングが気に入らない。と思って見てたら途中からいい感じになってきた。昼間の太陽の光の加減がすごくいい。夜の人工的な光がダメってことだったのだろうか。この照明ひとつでずいぶん印象も変わるのにもったいない。会話の切れ目のカッティングが面白かった。「戦争」をまじめに描くとなるとどうしても色々なエピソードが必要で、それゆえにどうしても散漫になってしまい、さらには退屈になってくる。この映画はその退屈さを小田エリカの純真な輝きでもってなんとか乗り越えようとし、大方成功しているように思う。 【R&A】さん [DVD(邦画)] 5点(2011-12-20 15:24:54) |
15.死に遅れた少年の目にうつる幻想の二週間。この監督、戦時下の日常にこだわってきた人だけど、リアリズムのようでいて、そこからちょっとはみ出すところがいい。ジャングルの湿気た雨の世界から生還してきた傷病兵が、こっちはずっと雨降っちょらんですねえ、とつぶやく。単に事実を述べただけなのだろうが、それだけで広がる青空がなにやら魔法にかかったもののように見えてくる。ラストの竹林の雷雨とそこにかかる虹が、単に虹としての美しさ以上のものに見えてくるのは、その魔法の効果だろう。 【なんのかんの】さん [DVD(邦画)] 6点(2007-10-03 12:22:25) (良:1票) |
14.黒木監督晩年の終戦映画三部作の評価、私見では「紙屋悦子」→「キリシマ」→「父と暮せば」の順です。他の二作品が舞台演劇的な演出なのに対し、この「キリシマ」のみロケーションを最大限に生かした、空間的広がりを持った作品になってます。多感な少年期に終戦を迎えた少年を、柄本ジュニア君が上手く演じてました。やっぱりカエルの子はカエルなんでしょうか?脇を固める役者陣も充実。ラスト行進する占領軍に向かって、「殺せ!殺せ!」と走り続ける横移動の長い長いシーンが、この映画のクライマックス。これら上記の良心的佳作が、都内岩波ホールたった一館のみでの単館ロードショーになってしまうっていうのは、やっぱり今の日本映画興行界の問題点のひとつだと思います。 【放浪紳士チャーリー】さん [映画館(邦画)] 7点(2007-07-27 11:37:53) |
13.まあなんちゅうか、Fuckin'純文学。これがキネマ旬報1位か…日本アカデミー賞の商業主義もうんざりだけど、キネ旬の「俺らはモノが分かってるんだぜ」的な態度もどうなんだかね。いや、別に純文学的だからどうという事ではなく、単純にこの映画には観客を引き込む力がないと思いますよ。特に抑揚がなくてもグッと引き込まれてしまう映画は沢山あるけど、これはひたすら退屈だった。ひとりひとりの人間像が練れているようで練れていない。妙に登場人物を多くしないで、うちのひとりふたりに絞り込んだ話にしても良かったと思うけど。時間の進行もよく分からなかったし、映画全体が何だか散漫な印象だった。まあ、「美しい夏」というだけあって、確かに風景は美しかったけど。 【C-14219】さん [DVD(邦画)] 4点(2007-01-29 02:46:59) |
12.良作ですね~ シリアスに終戦間際の霧島が描かれています..物語としては、リアルな日常が淡々と進むので..ちょっと淡泊に感じるかも..しみじみと戦争を見つめ直すには良いかもしれませんね... 【コナンが一番】さん [DVD(邦画)] 6点(2006-09-28 12:18:49) |
11.黒木和雄の最高作品と私は思う。同様のテーマの作品は、大島渚の『少年』などがあったけれども、これは監督自身の体験にもとづくだけあって、問題の深刻さと真摯さにおいて他をぬきんでている。また、主人公の少年と親戚の少女役の演技が、とても自然で、ただものでなかった。映像もふくめて、全体にすばらしい。 【goro】さん [DVD(字幕)] 10点(2006-01-01 02:02:02) |
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10.全体的に戦争の虚しさや滑稽さを漂わしてはいる。このような作品は良い評価をしたくなるが、作品の登場人物に魅力的な人が少ない。人間は弱いのでいろいろ間違いをしてしまうものですが、登場人物は弱い人間というよりもだらしのない人間が多い印象。弁舌の立たない戦争体験の講義を聴いた感じです。映画の志に+1点という感じで。 【チューン】さん 6点(2005-02-08 12:47:41) |
9.15歳の多感な少年の目を通して、戦争、生と死、性を幾重にも重ね、丁寧に描く事から、何のために生きるのか、如何に生きていくべきかをジックリと考えさせてくれる。ただ原爆が落とされたとか戦争が終わったというセリフが余分だった気がする。何の前フリも無く、竹ヤリを持って進駐軍に突進していく少年・一発の銃声の方がインパクトがあって良いと思う。 【亜流派 十五郎】さん 7点(2005-02-06 23:30:12) |
《改行表示》8.あの瓦屋根と、その上にいる少女・波を中心に、いろいろな比喩を想像できる。良くも悪くも見る人次第の映画。俺はハマった。 途中、一歩間違えば虚構の世界に足を踏み入れかねない危ういストーリーの流れを、一人で現実世界に引きつけてみせた原田芳雄の名演が印象に残る。 【藤村】さん 8点(2005-02-03 22:43:39) |
7.一昔前の、古い日本の夏の雰囲気はよく伝わっていると思いました。その点は美しい。、、、、、またありきたりの戦争殺戮シーンを描くのではなく、戦時中の一人の少年の心象風景を通して戦争を描き、反戦を訴えようという試みであることも理解できます。、、、、、、、、、しかし、日本映画の多くが犯している誤りを、同じように犯していると私は思います。どういうことかというと、特定の主人公の心象風景を感情的にべったりと描こうとするあまり、その登場人物以外の人間達が、単なる風景になってしまい、その時代、空間に生き生きと存在しているものにならないということ。言い換えると生きた社会的な空間が生まれないということです。、、、、、そういう手法は自然の風景の美しさを描くには相応しいかもしれないけど、人間の世界は描けない。だから、この映画で伝わるのは、南国の自然の美しさだけなのです。、、、、あっそうか、「美しい夏キリシマ」っていうんだから、この映画、自然観賞の映画だったのか。 【王の七つの森】さん 4点(2005-01-29 23:37:06) |
6.主人公の叔母の花柄のワンピースが素敵だった。ああいうの着てみたい。 【paraben】さん 6点(2004-11-19 15:09:23) |
5.黒木和雄監督のライフワークとも言える反戦をテーマに描かれた本作は、終戦を間際に控えた霧島を舞台にした群像劇である。監督自身の体験に基づいて描かれただけに、その意気込みには並々ならぬものを感じる作品だ。戦争映画とは言え日常化した戦闘機の編隊飛行があるという程度で、戦闘シーンなどと言ったドラマチックな場面がある訳もなく、むしろこの土地に住む名も無き人々の様々なエピソードを積み重ねていく事で、ドラマを確立していくというスタイルを採っている。そして彼らの日々の営みや慣習、戦時中のやり場の無い閉塞感といったディテ-ルがしっかりと描かれているからこその説得力が、ここにはある。出演者たちそれぞれの達者な演技が作品を支えてもいるのだが、その中でも生きていくことに彷徨する柄本佑と小田エリカの純真さには、まさにこの時代に生きている若者像を見事に体現してみせた。本作は“反戦!”と声高に叫ぶものではなく、その語り口はひたすら静謐であり続ける。それだけ余計心に染みるのだが、しかし、だからこそ戦争未亡人を兵士が慰めるという生々しいシチュエーションには、やはり違和感を覚えてしまうし、また監督の戦争に対する思い入れの強さが、果たしてどれほど戦争を知らない世代に普遍性を感じさせたかにも疑問が残ってしまう。 【ドラえもん】さん 7点(2004-08-24 18:43:45) |
4.監督の実体験がもとになっているというこの映画のテーマは、そのまま「鎮魂」である。自分が助けなかったことによって死んだ級友を、どうやって弔ったらいいのかという、本当にストレートで重い問いかけだ。死んだ級友は決して戻ってこないし、恨み言を言ったりもしない。だからといって級友のことを忘れることもできない。自分を責めつづけ、級友への負い目を感じながらこれからの毎日を過ごさなくてはならない。この負い目は米兵に殺されるという、級友と同じ死に方によってしか解消されない。しかし、終戦を迎え、少年の願いはかなわないまま。結局この映画では、級友の弔い方について何の解決もなされていない。しかし、答えの出ていない問いに対しては、その問いを叫ぶ(問いつづける)という態度で臨んでいくしかないのだ。この至極単純な人類の経験則が見事に描出されている。 |
3.黒木和雄の泥臭~い世界を覚悟していったんだけど、ありゃま意外にクールな展開。それでいてどのおハナシにもひねりが効いてて面白いじゃないか。こりゃ脚本の勝利だなと思ってエンドロールを見ると松田正隆。納得。方言に集中するためか演技に余計なものが出ないのもいい。少年が自分を「殺せ」と連呼するのは、浪花節とは判っていても胸に迫る。 【イツジ】さん 8点(2004-02-20 00:24:26) |
2.決して悪くはないしいいとは思うけれど、これがキネ旬1位というのはちょっとピンとこない。しかし監督が真摯にこの映画を作ったという姿勢や熱意は評価したい。終戦当時の戦争とは無縁の田舎が舞台だが、平和な田舎にも等しく戦争の陰鬱な日常があったことをいろんなエピソードで丁寧に描いている。親友を死なせてしまったトラウマ・自責の念に苛まれる少年を演じた柄本佑君が自然でいい、ナイーブな気持ちが伝わってくる。固める脇役がベテランの原田芳雄や石田えり、左時枝、香川照之などだから安定感がある。一番感心したのは風景描写。田舎でも60年近く経って終戦当時とはまるで様子が違っているだろうに、田舎道でもどこでも今を感じさせる絵がなかったこと。何気ない田園風景や霧島の遠景などの描写で、そいう昔を再現するのはさぞ大変だったのではないか。 【キリコ】さん 6点(2004-02-19 23:57:31) |
1. 作品の上映前、この日は初日でもないのに偶然、監督の黒木和雄氏が岩波ホールに来ていて、予期せぬ舞台挨拶を聞くことができました。この映画は監督さんの体験を元にした作品なんだなぁって思いました(映画の内容を仕込まずに観に行ったので)。これは戦争の映画です。でも戦闘シーンは1回も出てこない。それなのに100%戦争の映画。1945年8月の宮崎県霧島に住む少年の視点から、戦争を捉えた映画です。少年(つまり監督)の戦争に対する複雑な思いがとってもよく表されています。しっかし、この主役の少年がほんとに演技が上手いんだ・・・なんでかなと思って、上映中にチラッと売店で買ったパンフレットを見てみたら「柄本佑」と書いてありました。「あ、柄本明の息子かぁ」と納得(『偶然にも最悪な少年』にも出てましたね)。これは年配の人向けの映画なんですかね(観客も殆どご年配方でした)。そんなことないと僕は思ったんですけど・・・。ドンパチの戦争映画も確かに考えさせられることは多いですが、やっぱりこういう映画も観ないとダメですよ。とくに僕らみたいな戦争の「せ」の字も知らない若い世代が観て「戦争って怖いな」とかそういうことを感じる以前に、とにかく観ないとダメです。とってもお勧めの映画です。 【ひろすけ】さん 7点(2004-02-19 00:27:18) |