3.“実話である”と言われると、どうも弱いのよね~。というのは、ワタシのいつも通りの感想ですが。ある歴史上の事件を世間に知らしめる、というのに、映画というメディアは、実に強い力を持っております、何しろ、その事件を“2時間前後の長さ”にまとめて、それで作品として成立させることができる。本の場合、“2時間程度で読める本”ってことになると、こりゃ明らかにボリューム不足ですよね~。さてしかし、その映画の長さ(というか短さ)ってのが、クセモノだったりするわけで。その時間の中で、事件そのものを世間に伝えることにコダワルのか、事件をベースにして映画作者の新しい世界をそこに展開するのか。やや前者の傾向が強いように感じられる本作、やはり難しい一面を感じざるを得ない部分も。正直、「当時のコンゴの情勢」ってのが、伝わりにくい。映画は“抑圧された民衆”をそっちのけに、主人公の軌跡を追いつづける。主人公がベルギーに渡る直前に、当局にとっつかまってリンチされるのが、いかにもステレオタイプの描き方。主人公の演説が流れるラジオに人々が群がるシーンの、いかにもとってつけた感じ。「とりあえず一通り入れておきました」感の強い演出が、事件を伝えることにむしろ機能していない。国の将来を首脳陣が語り合う様子(今後のコンゴ。なんちゃって)も、何だか町内会の模様みたいで、その一方で主人公がしきりに「これはベルギーの陰謀だ」と疑心暗鬼になり苦悩する、その落差。しかもその主人公の苦悩、根拠があるのか妄想なのか、観ている我々はその苦悩を共有しきれない。結局のところ、社会的事件を扱うのに「当事者を主人公にした」ということの限界をやや感じてしまう、映画でした。とは言え、この衝撃的な事件を題材にしたこと自体で、すでに映画は熱を帯びパワーを有しております。そしてここではむしろ、政治的なドロドロと、雄大な自然との対比の構図、これを本作の魅力としておきましょう。