95.ベニスという都市空間のイメージが完璧に視覚化された映画である。複雑な道路に象徴される迷宮のイメージ、商業都市として退廃した没落のイメージ、昔、娼婦小屋が並んだことによる官能のイメージ、疫病が流行したことからくる死のイメージなど、アッシェンバッハの精神世界の退廃が、ベニスという都市と完璧に照応している。まさにベニスはデカダンスを表現するには完璧な都市空間と言えるわけだ。そして、それはベニスへと行く船と海(理性の世界から欲望の世界への移行)、ホテルとその砂浜(理性と欲望の交差する場所、外界との交流のある場所とも言える)、そしてベニスの都市部分(欲望が頂点に達する場所、アッシェンバッハがタジオを追いかけて迷い込んでいく迷宮)と、空間論を駆使して、アッシェンバッハが意識から無意識の世界へと降下していく過程が完璧に描かれている。また、アッシェンバッハがタッジオに対して投げかける視線の演技が、気持悪いほどアッシェンバッハの抑えきれない感情を描き切っている点にも注目したい。規律を重んじたアッシェンバッハがタッジオという完璧な美の前になすすべもなく死化粧(「地獄に堕ちた勇者ども」のソフィーを連想させられる、まさに完璧な深層と表層の対比である)をして死んでいく、このデカダンスそのものを視覚化したこの映画の素晴らしさは筆舌に尽くしがたいものである。 【たましろ】さん 10点(2003-11-09 23:55:55) (良:4票) |
【veryautumn】さん [映画館(字幕)] 4点(2004-01-08 16:09:43) (笑:2票) |
93.最初に見てからもう30年近くなるんですねぇ。“ベストワン監督”のルキノ・ヴィスコンティの作品群の中でもとりわけ抜きん出た傑作。僕個人としても生涯のベストワンと言い切ってもいい作品です。休暇でベニス(現ベネチア)の島に来た老作曲家が、たまたま遊びに来ていた美少年に心を奪われ、やがて熱病に冒され死んでいくというストーリー。貴族出身でもあるヴィスコンティ監督の絢爛豪華なるセットや衣装の見事さは、決して貴族趣味に陥っていない気品があり、また映像と音楽の融合は見事というしかない。ラスト、夕陽の海の中で戯れる少年(幻のような美の極致)を遠く眺めながら、砂浜の椅子にもたれて苦悶の表情の中、笑みすら浮かべながらやがて息絶える主人公(=ダーク・ボガードが一世一代の熱演)が哀れだ。その顔には“美”と“若さ”に憧れるかのように化粧が施されていて、やがて死熱によりそれが崩れていくさまは強烈な印象を残す。21世紀にも語り継がれていくべき名作です。 【ドラえもん】さん 10点(2000-09-25 00:05:09) (良:1票) |
92.美と死をうまく対比している名作だと思います。ヴェニスだから成立する物語ですね。主人公は同性愛者ではなく、家族と仕事を失った状況で絶望的になっていた時に美しいものに遭遇し精神的に惹かれていった普通の男性ですね。美しい映像と音楽、最低限のセリフで、じっくりと堪能しました。 【みるちゃん】さん [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2022-09-26 01:58:12) |
91.最初のシーンは名作感が漂う。老いた主人公と黄昏と音楽がとても合っている。 それ以降、内容はかなり退屈。機微に注目するには気持ちが入らない。やはり音楽が映画全体を救っている。 いずれにしても、人は過去には生きられない。現在と未来に生きるしかない。 【simple】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-08-10 22:49:36) |
90.LGBT?美へのときめきはそんな範疇ではないでしょ。主人公の気持ちは伝わってきますが、それにしてもじれったい映画でした。 【ProPace】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-08-02 21:00:52) |
89.この作品の次の日に、ブリキの太鼓を見たなんて…(両方、少年が出ていることは知っていたが内容については全く知らず)「ショタコン」な映画が続いていますが、置いておいて。 絶世の美少年として有名なアンドレセンが出ているということで鑑賞。 内容に関して全く知らなかったので、タイトルからして1人の男の一生を振り返るような作品で、アンドレセンは少年時代を演じてるのかなーなどと呑気に構えていたら、予想外。 いやー、直接会話することは(ほぼ)ないのに、凄いですね。ストーカー紛いの執着… 交差することはなくても、片方の視点からは強烈な思い出になるんですね。(少年側からは、そこまで印象に残らないと思う) 内容がどうこうより、雰囲気と映像美を堪能する作品だと感じた。 アンドレセンの成長した姿は以前見たことがあるが、検索しない方がよいと思う(笑) |
88.トーマス・マンが自らの体験を小説として書きとめ、ヴィスコンティが映像とした「ベニスに死す」は、ドイツ文学とイタリア映画融合の妙味。 マンは主人公アッシェンバッハにマーラーの風貌と自分の生業を与えたが、ヴィスコンティは彼をマーラーを模した作曲家とし、アダージョを流す。 ナルキッソスの化身のような少年タージオを憑かれたように見つめるアッシェンバッハの眼差しは、作家とバイセクシャルの監督のものでもあるか。 マンが主人公にほどこした化粧をヴィスコンティが黒い汗と涙に転化させることにより、美に取り込まれたアッシェンバッハの醜怪さを際立たせる手法は残酷というほかないが、それを受けて水に戯れるタージオの輝きはいや増す相対性。 当人の思いの純度に反して、崇拝というものが傍(はた)から見れば至極滑稽なものであることを冷徹に示したヴィスコンティは、自らの美青年嗜好をも秘かに顧みていたのではあるまいか。 ダーク・ボガートは「愛の嵐」同様異常な愛に殉じる男、ビョルン・アンドレセンは自分が美しいことを知っていて、崇拝者を振り捨てもせず緩慢な死へ追いやる少年に扮してはまり役。 自分が死ぬことも知らず、タージオの幻影に追いすがりつつアッシェンバッハの意識は薄れてゆく。 【レイン】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-05-10 06:59:58) |
87.オッサンのハアハアぶりだけを延々2時間以上見せつけられても・・・制作の発想は嫌いではないが、ここまであまりに単調だと、興味が薄れてくる。映像的な美しさに4点。 【Olias】さん [DVD(字幕)] 4点(2011-09-03 12:29:03) |
86.ビョルン・アンドレセン演じるタジオが美しくて、とても説得力がありました。途中まで「め、目が合ったー!!(///)」と完全にグスタフ目線になっていました。グスタフさんのようにならないように注意しようと思います。 【*まみこ*】さん [DVD(字幕)] 10点(2010-12-05 18:17:30) |
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85.う~ん。この後味。ヨーロッパ映画、ですよね~~。どんどん堕ちていく主人公の姿が、悲しくて、切なくて、不細工すぎて笑っちゃった、、、すみません。 【カルーア】さん [DVD(字幕)] 6点(2009-06-21 20:15:37) |
84.老主人公をみているとなんだかはずかしくなった。 【ホットチョコレート】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-02-01 18:07:06) |
83.いや本当によく見つけたよな、こんな美少年。この映画は基本的に芸術・哲学作品ですが、芸術・哲学だけだと観る人を選ぶわけです。私はあまり芸術のわかる人間ではないし、一歩違えればただ退屈してたと思うけど、アンドレセンの美しさで物語に説得性が出るし、「映画」には不可欠な「娯楽」面を備えたといっても過言ではない。加えて、マーラーのアダージェットとベニスの街並みの美しさ。こんなに「お耽美」にはまらせてくれる映画も滅多にないですね。でもこれは、その対極の「醜」「老」「病」が絶妙に描かれているからだとも思う。もっと老いてからもう一度観てみたら、より深みが解るかも。今でも高得点つけれますが。 【あっかっか】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2009-01-20 13:44:14) |
82.友人と美についてあーだこーだ激論を交わしていたグスタフも、タジオの持つ美を前にして成す術もない。掴むことのできなかった美の後をひたすら追い続け、自身の醜い姿をさらし続けるしかない主人公を見て、他人事では済ませられない恐怖を感じます。 【njld】さん [DVD(字幕)] 9点(2008-12-20 00:54:34) |
81.タッジオは性別を超えた美しさを纏っている様に感じました。これを耽美というのでしょうか?私にはよくわからなかったのですが、この雰囲気は嫌いでないです。頽廃的な感じがして。映像に身を委ねてしまいました。 【kagrik】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2008-12-16 22:56:46) |
80.タジオかわゆす、美しす* ̄▽ ̄* いや、でも、おっさん相手に思わせぶりって、、、グスタフはおろか、タジオもまたフツーじゃないよ。( ̄  ̄;) 分かるような分からないような、微妙な映画、名作といわれればそんな気もするようなしないような、、、見るのが早すぎたかな??? グスタフ位の年になって見ればまた違う感情が込み上がってくるのかもしれません。頭触りシーンが良かった。ドキドキ* ̄  ̄* 【まおあむ】さん [ビデオ(字幕)] 5点(2008-04-01 22:00:50) |
79.ダーク・ボガードは生理的に合わず。黒い汗が気持ち悪い。 【にじばぶ】さん [DVD(字幕)] 4点(2007-09-03 16:16:31) |
78.美しい映画だった。「美」という追い求めてきたものに、人生の最後に己自信は全てを否定され、醜くなってから出逢う。そして、かつて自分も「美」を持っていた。僕には挿入されていたグスタフとその妻、娘が3人で過ごしているシーンは美しいものに見えてしかたがなかった。グスタフはかつて自分が持っていて、そして失っていたことに初めて気付いたんではなかろうか。だからこそ、タジオにあれほど魅かれたのではないか?マーラーの音楽とビスコンティの映像に魅せられました。それにしても、この映画が分かる気がするのは、僕ももう老いてるのか?まだ、20代なんだけど。 【思込百遍】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-04-30 05:36:42) |
77.物語の大筋を一言で言い表せる映画というのはそれほど多くないが、本作はまさにそれ。「オッサンが美少年を見つめる話」。こんなに長いのにただそれだけで、こんなに台詞の少ない映画も珍しい。私は男性だが、ここまで見せつけられると「オレもこの子好きかも」なんて錯覚しかけるほど。その力がすごいし、映像も音楽も美しい。 【えいざっく】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-03-14 17:01:10) |
76.「若さと老い」「生と死」「美しさと醜さ」…そういったものを容赦なく対比させて完璧な映像美に仕上げていると思います。ビスコンティの美意識には参りました。この老人にとって少年の美しさは「天使」だったのか「悪魔」だったのか…。ラストの「キラキラ」と「ドロドロ」は生々しい宗教画を見ている気分でした。 【Tweety】さん [DVD(字幕)] 9点(2007-01-25 20:41:16) |