73.どんなに食うに困っても、子供が食べ物を盗んだら叱ってそれを返しにいく。妻や子供との約束は、たとえ物乞いをしてでも守り抜こうとする。妻子のため、それ以上に親友であるプロモーターのために、命がけの試合に臨もうとする…。 ロン・ハワードの映画は、いつでも〈道徳的〉だ。どんなに混乱し、汚辱にまみれた社会や世界にあろうとも、彼の映画の登場人物たちは、自分のため、愛する者たちのため、信じることのため、懸命にひたむきに生きよう、生き続けようとする。そしてその生きざまは、最後には必ず「報われる」のだ。それを、キレイごとに過ぎるだの、甘いだの、だから面白くないだのと批判したり嘲笑するのはたやすいだろう。けれど、父親が「約束する。決してお前たちをよそにはやらない」と言ったとき、それまで心の奥底に“捨てられる”不安を隠していた子供が父の腕に顔を埋めて泣くシーンの美しさは、常に〈道徳的〉であろうとする者たちだからこそではないか。その美しさをにすら何も感じず、あざ笑う向きがあるのなら、ぼくはその狭量さこそを不幸に思う。…「キレイごと」を信じなくなったときから、この世の中はこんなにも生き難いものになってしまったのではなかったか? そしてロン・ハワードは、決して登場人物の内面や感情を大げさに、分かりやすく描こうとはしない。彼はきっと映画というものが、ひとつの微笑、ひと粒の涙、まなざし、沈黙、…そういったほんのちょっとしたしぐさや表情をていねいにすくい取ることだと信じている。もちろん迫力あるボクシングシーンなどの見せ場(スペクタクル)も用意しつつ、どのように撮れば人物たちの心の機微が映し出せるのかに全力を尽くす(だから、彼の映画に出演する役者たちは誰もがあれほど魅力的なのだ)。カメラの位置も、照明も、美術も、すべてがその一点において最も的確であるように“演出”されているのだ。それが、ハワードにとって、映画を撮る〈倫理〉だ。彼は決して映像の「詩人」ではないだろう。けれど間違いなく、ドラマにおける最良の「演出家」である。 物語における〈道徳〉と、映画における〈倫理〉を決して見失わないこと。そこからうまれた本作が現代にあって「最高の映画」であることを、ぼくは確信している。 【やましんの巻】さん [映画館(字幕)] 10点(2005-10-05 13:25:19) (良:2票) |
72.本当に本当にハリウッドらしい映画なんだけど、ラッセル・クロウの嫌いなわたしでもこればかりは感服いたしました。試合のシーンでは柄にもなく熱くなってしまったし、月並みな言い方だけど元気をもらいました。やはり一生懸命生きているひとの勝ちですね。アメリカンドリームといえばそうなのだけれど、それよりもブラドッグのまっすぐな生き方に共感した。ポール・ジアマッティが出色。どこかで見た顔だと思ったら「アメリカン・スプレンダー」のひとなんですね。これから要チェックの俳優さんです。 【はちかつぎひめ】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2007-02-28 22:05:22) (良:1票) |
71.特にひねりのない直球勝負の良い映画でした。くせのない良心作ばかりを職人さんのように作り続けるロン・ハワードという監督を私はあまり好きではないのですが、この映画ではその無個性ぶりがしっくりきていました。不景気でどん底に追い込まれた元スター選手が復活するという超ベタなお話で、守る者ができたから彼は若いボクサーにも負けないんだよなんて聞き飽きたきれいごとで出来た映画ですので、これぞロン・ハワードが撮るべき映画。彼のマジメ一直線な演出とここまで相性の良い題材は他にはありません。とロン・ハワードをバカにしてしまいましたが、確かにこの映画は良いんです。ロン・ハワードの手腕がここまで吉と出る題材はなかなかありません。実話というエクスキューズがあるおかげで「はいはい、ベタですね」とバカにもできないので、けっこう素直に話に入り込めました。ファイトシーンも良く撮れていて、体中に力を入れながら画面に見入ってしまいました。敵のパンチをいっしょによけたりなんかして。脚本の出来が良く、要所要所でいいセリフもあるので、素材の良さを邪魔しないマジメな演出がこの映画には最適なのです。他の監督が撮っていれば、やはりそれぞれのクセが出るせいでどこかがおかしくなったと思います。スコセッシが撮れば夫婦ゲンカの罵りあいが見るに耐えなかったかもしれないし、ストーンが撮ればボクシング業界の内幕がドロドロしすぎたかもしれないし、スピルバーグが撮れば感動の押し付けが度を越したかもしれない。ロン・ハワードという無個性な演出だからこそ、バランスのとれた本当の良心作になりえたと言えます。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 8点(2006-11-05 22:16:53) (良:1票) |
70.20何年ぶりに「ロッキー」を彷彿とさせる映画に出会え、同じ様に感動出来たことがすべて。世界恐慌というどん底のアメリカが舞台で、家族・親友と共に必死に生きる様が描かれている。ラッセル・クロウの演技がまた良い、強さと弱さが表裏一体の様な難しい役を自然に演じきっている。そして名作に名脇役有り、裏で支えるマネージャーの存在が光っていた。 【まさサイトー】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-07-17 04:30:28) (良:1票) |
69.傲慢さもなく、ただひたすら、妻と3人の子供を守るために、プライドを捨ててでも働き、リングでも逃げずに、真っ直ぐ立ち向かうジム・ブラドックの生き様に勇気をもらいました。プロボクシングの世界は、一夜にして一攫千金を手にできる。妻のメイは、家族を守ろうとする夫ジムを誇りに思いつつ、死と隣り合わせのボクシングをやめてほしいと願う。家庭をもつことと、それを支えることって、どんな時代でも大変なことだと思う。「男なんて山ほどいるのにね(笑)」なんて言いつつ、でもホントにこの人で良かったと芯では思っている、レネー・ゼルウィガーの静かだが力強い演技もこの映画には欠かせないもの。2人ともお互いを思いやり、愛情をもって子供たちを守っていくこと(金銭の問題だけでは決してできないこと)が、口で言ったり思っているだけよりもどんなに大変かを伝えてくれた。当時の失業者たちにも勇気と希望を与えてくれた、こういう誰も知らないような偉人を映画化してくれたことは、それだけで評価に値する。きっと、次に観るときには10点になってると思う。観て良かった。 【どんぶり侍・剣道5級】さん [DVD(吹替)] 9点(2006-01-27 12:45:08) (良:1票) |
68.「絶対よそにはやらない!」と子供を抱き寄せるシーン。この映画の劇場予告編でこのシーンが使われていましたが、予告編なのに泣いちゃいました。もう観る前から泣く準備は整っていました。本編が始まる前にパンフレットの流し読みで既に涙を止めるダムは決壊間近。本編が始まってすぐに、泣くところでもなんでもないところでダム決壊。何度も泣いた後、いよいよ「絶対よそにはやらない!」がきた。いったいいつ涙は枯れるんだろうと自分でも驚くほど泣いた。涙の理由は後日に再見した『ジョー・ブラックをよろしく』で判明(レビュー追記済み)。かーすけさん(↓)のおっしゃるとおりで観る者の境遇によるところが大きいと思われます。それでもここまで私の涙腺スイッチを完全網羅したこの作品は私の中で感動作として強烈に刻まれました。貧乏よりも盗みのほうが恥かしい。物乞いよりも約束を守れないほうが恥かしい。ボクサーとしてのプライドよりも男としてのプライドを持った行動に感動。そしてラストもボクサーとしてではなく家族の為でもなく、民衆の希望の光であることを裏切らない為、つまりやっぱり男としてのプライドを持って戦う。それが家族の為でもある。妻も家族よりも自分よりもそのプライドを尊重するに至る。泣いた。大いに泣いた。でもボクシングシーンは疲れた。細かいカットと鈍い音とフラッシュで見せる壮絶なボクシングシーンに疲れた。しかし涙の量を考慮して、そして大恐慌時代を見事にカラーで見せた画を考慮して、7点進呈。 【R&A】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-11-28 16:53:23) (良:1票) |
67.家族の為に戦う男・・・大恐慌の最中の話でしょう仕事が無い中で家族を養って行くのは至難の業だったと思う、特にアイルランド系で職に付き難い状況を考えると電気が留められるまで何も出来ない当時の実情が良く読める。気丈に振舞う奥さん役のレニーが教会に行ったシーンあたりからジーンと来ていた。病んだアメリカでどん底に苦しむみんなの気力を奮い起こした「シンデレラマン」に対する周囲(民衆というべきか?)の応援にはいたく感動した。レニーが「殺される」と怯えていた姿と・・帰宅後に勝ったと判った瞬間の喜びようは素直にジーンと来た。 【だだくま】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-11-23 19:42:39) (良:1票) |
66.名拳ラッシー。(アイルランド人で敵がベアとは・・またぁ? 笑) 家族の為、そして自分の夢の為にと戦う彼の姿はお見事。。 でもごめんなさい。私はほとんど感動できなかった。 これは観る者の性別、既・未婚、子の有無、&ハートの素直さによって印象が変わるのではないかしら。 生活苦の中で生きるこの夫婦の姿は、親としてまず当然というか、、それが普通でしょう? なのになのに、お金や子どものことで援助してくれた相手への感謝の気持ちや態度がこの夫婦からはあまり感じ取れない、私ほんにガッカリ。(金乞い場面の半分みじめ、半分安堵な表情はいいけど、その後にすまなさを見せてほしい私。かすかなプライドだけじゃ何かイヤ!) 多少ベタになっても、たとえば妻の節約振りとか、意外な弱さや優しさだとかで泣かせる演出が欲しかったなぁ。がんばる自分を主張する、なかなか好きになれん妻であった。 これではレニーのゼルウィガー、、デルウィ、、出る意味が(●~*)ないように思う。 (「宇宙戦争」で、妻役ミランダ・オットーは元夫や現夫との関係、子への思いをあんな短い出番で的確かつソフトに示し、観る者を必要以上?に味方につけたではないか!) むしろここではポール・ジアマッティ夫婦の方が精神的にしんどい思いをしながら支えあってる感じが出ていてちょっと皮肉。 (サイドウェイもリングサイドも自在に演じられるおっちゃんやねっ。) あの苦しい時代を共に生きる人たちが作り出すボクシング場の臨場感は確かに良かったと思う。でも試合シーン長かっ、、冷血でごめーん(笑)。真上からのカメラもくどかっ、、字幕出るタイミングも遅、、文句言いで全部ごめーん。 【かーすけ】さん [映画館(字幕)] 5点(2005-10-03 01:24:22) (良:1票) |
65.普通に良い物語です。名誉の為でなく権力の為でなく、ただ愛する家族を助ける為だけに闘い続けた男の実話。中でも主人公が昔の仕事仲間の所へ募金を求めに行くシーンは泣けました。「これだからハリウッドのハッピーエンドは…」とか難癖付けるのが馬鹿らしくなってくる。いつしか自分もボクシングの観客の一人になり、客席からジム・ブラドックを応援している姿に気付く。観終った後、無性に何かをやり遂げたくなる映画。 【かんたーた】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-09-20 21:53:29) (良:1票) |
64.落ちぶれたロートル・ボクサーが番狂わせを起こし、大恐慌時代の生活苦に喘ぐ人々へ夢と勇気を与えたという実話を基にした人間版「シービスケット」。70年前の実話とは言え、どん底の生活をしていたボクサーが急遽、当て馬として試合に出され、そこでチャンスを掴み取るというのは、ほぼ「ロッキー」と同じ展開。従って、予定調和のサクセス・ストーリーでしかありませんが、じっくりと描かれる悲惨な大恐慌期の生活や試合シーンの迫力で、2時間半近くを一気に観せて貰えます。たまにはこういうストレートな映画も気持ち良いですし、生活苦の拡大する現在の日本にはぴったりだとも思います。余程「セカンド・チャンス」に賭けようという人が多かったのか、試写会場で珍しく拍手まで起きたのには少し驚きました、7点献上。 【sayzin】さん [試写会(字幕)] 7点(2005-09-09 00:09:59) (良:1票) |
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63.「ミリオンダラー・ベイビー」同様アイルランド人のボクサーもの、ということで公開時期が悪かった気もするが(こっちのほうがずっとお金がかかってるし)、出来はそこそこいいほうだと思う。毎回ソツのない演出を見せるロン・ハワードが今回は年代を感じさせる映像を見せ、貧窮生活から立ち直ろうとするブラドックに熱狂した大恐慌時代の人々の気持ちは十分に伝わってきた(33年頃って言うとキング・コングを思い出すなぁ)。ボクシングシーンも臨場感があって素晴らしく、ラッセル・クロウの演技もオスカー俳優の名に恥じない好演ぶり。ポール・ジアマッティもなかなかいい味を出している。 だが、残念ながらいい事尽くめというわけでもない。ストーリー自体はややありきたりなだけに、メエの人物描写が一面的でキャラに深みがなく、彼女に共感しづらい。レニー・ゼルウィガーの力演が一歩間違うと印象に残りにくいこの役を救っているはいるが、家族愛をメインにするならこの点は何とかしてほしかった。そもそも家族を尊重する父親という設定自体ありきたりなのだから。マイクの存在が後半忘れ去られてしまうのも問題だろう。8点か7点か迷ったけど、とりあえずこの点数。 【マイカルシネマ】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-08-25 01:39:55) (良:1票) |
62.「ミリオン・ダラー・ベービー」がアカデミー賞をさらった後でまたボクシングものか・・・よくやるな・・・でもさすがにイーストウッドとロン・ハワードでは味つけが違うだろうし・・・とあまり期待せずに見に行きました。ロン・ハワードとラッセル・クローのコンビなら「ビューティフル。マインド」みたいなもっと凝ったストーリーを想像していたのにあまりにシンプルな出来で驚きました。アラモ(2004)が同監督の作品だということは今、知ったのですが、「アポロ13号」や「ビューティフル・マインド」を見る限りカメラ美術に凝る監督という感じは持っていませんでした。でも、この作品では薄暗がりを写すカメラワークなどで凝りまくっているようです。結論ですが、たまにはシンプルなスポコンものやサクセス・ストーリーを楽しんでみたいというぶんには良い作品です。1930年代の雰囲気もよく出ていました。(因みに時代背景はアカデミー賞の多部門にノミネートされた「アビエーター」と同じです。)陳腐な作品になってしまったかもしれないストーリーをラッセル・クローとレニー・ゼルウィガーの演技派コンビが十分に見ごたえのあるものにしています。 【かわまり】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-08-08 00:47:29) (良:1票) |
61.最近、ホラーテイストの映画ばかり観ていたので、こういったドラマもいいなと思いました。 ホラーは同じような展開のものが多くて、集中して観れないんですよね。 大人になったということでしょうか。 この作品は主人公家族の人生の浮き沈みにメリハリがあって、感動させられるシーンもいくつもありました。 【プラネット】さん [インターネット(字幕)] 9点(2024-11-17 18:29:28) |
60.ロキシーも魅力的だったけど、それとは対極のような素晴らしい奥さん。それにしても色を付け過ぎなのか試合が凄過ぎる、当時生で見ていたらもっと感動したんだろうか? 【ProPace】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-12-20 23:39:04) |
59.ボクシング映画は見応えのあるものが多いが、これも素晴らしい。 こんな作品があることを知らなかった。この迫力にちょっと加点してしまう。 【simple】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2018-11-24 23:15:25) |
58.映画の娯楽としての本来的な味わいを堪能できる作品で、大変感動しました。 主人公の彼のパーソナリティに好意を寄せないことはできません。不安な子供と抱き合うシーンや物乞いのように寄付を頼むシーン等には、彼の魅力が植え付けられるほど感じてしまいます。ボクシングという彼の自分の仕事に誇りを感じざるを得ない最終ラウンドの姿勢もカッコよすぎる。 出来過ぎた結末は展開を予期出来てつまらなくなってしまうものだけれど、この作品はつまらなくならない! それは主人公を応援する者同じ気持ちになっているからであり、こうした気持ちになれるのも製作に携わった人の努力によるものである。そう考えると感謝したくなります。 【さわき】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2018-11-20 17:27:14) |
57.最近の映画に余り魅力が感じられない状態ですが、たまたまポール・ジアマッ ティーも出ているらしいので録画して後日拝見したところ、これが大当たり!! 苦手役者の主役二人(特にレニー・ゼルヴィガーの地味で控えめな演技)も、こ の作品だけは見直しました 【白い男】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2016-11-05 19:20:26) |
56.まさにロン・ハワードという感じで特に落ち度もなく安定して見れる映画。 |
55.うーん。最後まで大きな挫折もなく、何か著しいハンデを乗り越えたというカタルシスなく……。 【K】さん [DVD(字幕)] 5点(2014-05-13 11:47:12) |
54.自分の意地を張って譲らないだけがプライドじゃない。 家族の為に自分の意地を捨てることもまたプライド。 そう思わせる映画でした。 これは良作。 【かめきち】さん [DVD(吹替)] 8点(2012-04-15 06:56:50) |