1.渋谷実監督作品初鑑賞。先日池袋文芸座にて。何故か全篇フランス語字幕付きという、不思議な環境での鑑賞となりました。戦前の著名な溝口作品自分は未見の為、山田五十鈴といえば戦後の映画での、主に和装姿のどちらかと言えば受身的役柄の彼女しか知りませんでした。いやあ、びっくりしました!この映画での、この「マダム品子」アグレッシブ演技。今に至るまでの、彼女が名女優の呼称をほしいまましていた所以を改めてこれで納得。主演の池部良や小林トシ子なんて、彼女にかかったら赤子も同然、お釈迦様の手の平で遊ばれてる孫悟空みたいです。天下の二枚目、池部良を四つんばいにさせ足げ状態でドライヤーで髪を乾かすシーンなんてもう爽快そのものwストーリーは、同時期のアメリカ映画「陽のあたる場所」日本版翻訳バリエーションといったところ、それにお役所と出入り業者との癒着をねちっこく絡めた構成。まあ当時としては野心的なテーマゆえに、高い評価を受けた(この年キネ旬ベストテン第四位)理由も判ります。だってスピーディな展開で面白いもん、これ。池部良自身もこの映画を気に入ってるのか、最近出版された「映画俳優 池部良」の表紙カバーはこの映画での山田五十鈴とのツーショットシーンでしたね。マダム品子が経営するバーのセット・美術も独創的で◎。(追記)偉大なる巨星遂に落つ・・・!そんな言葉が、今日の山田五十鈴さん死去のニュースを聞いた途端、私の中に浮かびました。そりゃ若い頃の「浪華悲歌」も素晴らしかった。戦後の「東京暮色」も「流れる」も「ぼんち」もちょい出の「疑惑」でも。「全身女優」山田五十鈴の映画の代表作を挙げようなんざ、おこがまし過ぎる。それでも敢えて私は、この「現代人」での極め付け悪女「マダム品子」役を、彼女一番の代表作として挙げたい思います。DVD化されればこの作品、もっともっとレビュー数増えると思うんですが・・・。成瀬監督の「流れる」の出演者の皆さん、殆ど鬼籍に入られました。生前山田さんがインタビューで、この作品の裏話を面白おかしく語られてましたが、あちらでもこの面々が勢揃いして山田さんを出迎えられてたら、さぞかし楽しそうな光景だろうなあ・・・と。ご冥福、心よりお祈りいたします。