61.黒人と白人を隔てていた壁がいとも簡単に崩れ去ってゆく。愛すべき予定調和を見せた『グラン・トリノ』の後でもさすがにこれには拍子抜けした。おそらく誰もこんな語り方はできない。なぜならそこに辿り着くには様々な障壁があり様々な苦労があり複雑なやりとりがあり複雑なからくりがあったに違いないから。何よりも前提となる南アフリカの歴史があるから。しかしイーストウッドはシンプルに語ってゆく。障壁が描かれなくても誰もそこに障壁がなかったとは思わない。苦労が描かれなくても誰もそこに苦労がなかったとは思わない。観客を信頼している証しとしてのシンプルさ。そして白人と黒人が手を取り合うことがさほど難しくないとでも言うように簡単に話は進む。実際に難しいことではないのかもしれない。それを行うことが難しいのであって。イーストウッドの描くマンデラはそれを適格にこなしてゆく。自分を虐げてきたものたちを許すということを。『グラン・トリノ』のレビューで私は書いた。過去の自身の作品の中で十字架をちらつかせながらの残虐行為を描いてきたイーストウッドはキリストが成し遂げたことを生身の人間で成し遂げさせることで自身の宗教観に対するひとつの答えを見せたと。ここでも同じことをしている。マンデラは計算する。どうすれば政治手腕を発揮できるか。どうすれば国が豊かになるか。その手段として「許す」という行為がある。そして「許す」を演出する。あえて白人の象徴のユニホームを着る。白人の護衛を信頼する。並大抵のことではないだろう。しかしそれは成された。やったのは人間だ。神話ではなく実話なのだ。娯楽であることを意識したこれ以上ないくらいのシンプルな語り口の中にもイーストウッドの印が確実にある。そこがたまらなく嬉しい。 【R&A】さん [映画館(字幕)] 7点(2011-02-07 15:34:14) (良:4票) |
60.もう終始、安心して観ていられる信頼のイーストウッド印。 マンデラ大統領の一時期のみに焦点を絞り描くだけでも十分に人柄が伝わってきます。 モーガン・フリーマンは漲る風格でマンデラを演じ見事な存在感で映画を引き締め、 マット・デイモンも負けずにラガーマンを好演・・隙ねぇ・・ ただ一つ思ったのは前半で国の恥とまで罵られたチームがワールドカップまでにグンっと強くなります。 そのあたりがやや唐突に感じ、強くなる過程はもう少しちゃんと描いて欲しかったかなと思いました。 後は演出が『ベタ』ともいえる手法をいくつかのシーンで見られ、最初は首を傾げましたが後で思うと、素直にあの当時の熱量を観客に体感させる、てっとり早い演出だったのかなぁと思いました。 マンデラ大統領退任後の現在の南アフリカはマンデラが映画の中で掲げられた理想とは程遠い事になっているのでややもの哀しさも感じますが、ラストで流れる若者がラクビーをするシーン(撮影クルーが実際の南アフリカの街で見かけて、偶然に撮れたシーン)を見ると、『あれから受け継がれているものは確かにあった』『あの時の団結を思い出して欲しい』と語っているようでした。 【まりん】さん [映画館(字幕)] 8点(2010-02-07 15:07:21) (良:3票) |
59.国が一つになっていく感動とスポーツ物の感動とが一体となって押し寄せてくる。4300万人の南アフリカ国民が応援しているという事を表現しようとするとき、家族みんながテレビの前に集まってるとか、スポーツバーで騒いでるとか、そういう画は当然だけど、あの飛行機のくだりですべてを感じられるってのが巧い。サッカーワールドカップの決勝はだいたい頭に入ってるからダメだけど、ラグビーワールドカップの結果等は全然知らなかったので決勝はドキドキ、でも「負けざる者たち」というサブタイトルは結果ばらしてるみたいだからあまり良くないかな・・・。それにしてもクリント・イーストウッド監督の安定感は凄まじい。素晴らしい時間を頂いた。 【リーム555】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-12-28 22:40:32) (良:2票) |
58.もうね、映画を知り尽くしているとも言っていいイーストウッドの作品らしく、安心して最後まで観れました。 アパルトヘイトの事や1995年のラグビーワールドカップの事やラグビーのルールすら理解してない人でも充分楽しめる(感動出来る)仕上がりだったのではないでしょうか。 欲を言えば黒人隔離政策の内容を前置きとして説明しても良かったろうし、ラグビーの一番の感動する得点はトライと思う私にとって、ペナルティゴールで加算されて行くのは少し寂しかったかな。まあ実際の試合の内容がそうであったのなら仕方が無いけど、それくらいの脚色は許されるんじゃないかな。 『赦す』事の大事さ。この事を改めて考えさせられました。 私もこう見えても子育て世代。我が子に『赦す』事の大事さを、この映画を例に挙げて語っていきたいと思ったものです。 あと、音楽も良かったですね。とても厳選されててシーンにとてもマッチしていたと思います。 それと余韻を楽しめるエンドロール。 隣りや前の席で観賞されてた70歳台くらいの奥方など、絶対最後まで観ずに立ち上がりそうな人たちが館内の照明が点くまで座り続けていらっしゃいました。 最近ではこんな光景はグラントリノに続いて2回目です。 次作はサイコサスペンス的なのを撮ってくんないかなー。。。 【Pea Shan】さん [映画館(字幕)] 9点(2010-02-08 22:45:01) (良:2票) |
57.ラグビーワールドカップで3回目の優勝を遂げた南アフリカ。こんまいチョロチョ動き回るデクラーク選手が目立ちまくっていましたが、キャプテンはチーム初の黒人主将となる巨漢シヤ・コリシ選手。貧民屈育ち、少年時に優勝時のワールドカップを観て「国がここまで一体となれるのか」と衝撃を受け、ラグビーの道を目指すことになったそうな。 ワールドカップ初参加・初優勝時の南アフリカを描いた本作。強豪国として名を馳せながら連盟からオミットされ、アパルトヘイト撤廃により初めて大会参加が認められる。でも当時ラグビーは上流階級、即ち白人限定のスポーツと見做されており「アパルトヘイトの象徴たるスプリングボクスなど潰すべき」と黒人達は叫ぶ。一方で「この国ももう終わり」と士気がガタ落ちになる白人選手達。そんな彼らを身一つで説得し、鼓舞する為に必死に動き回るマンデラ大統領。最後には、黒人と白人が一体となって熱狂の渦に巻き込まれる。実際にはもっと色々あったでしょうが、脚本がシンプルながら本当によく出来てると思いました。 当時の黒人の大半はサッカーにしか興味がなかったそうで、大統領警護の黒人SPが白人SPにいちいちしょうもない質問を発する小ネタが良。「おい何が起こったんだ!?」「得点が入ったんだよ。」 当時チームに黒人は1人しかおらず、それが20年の時を経て、初の黒人主将を戴き世界制覇。映画とリアルが一連となった感動巨編のようです。 【番茶】さん [DVD(字幕)] 8点(2019-11-24 23:50:31) (良:1票) |
56.「事実は小説よりも奇なり」とはよく言ったもの。 歴史上におけるトピックスと成り得る出来事は、往々にして、「創作」における「遠慮」を容易に飛び越えていく。 もしこの映画のストーリー展開が、完全なる創作だったとしたならば、「なんて安直で都合のいいストーリーだ」と批判は避けられないだろう。でも、事実なのだから、ストーリー展開そのものに対しては、批判のしようがないというものだ。 この映画は、二人のリーダーの話である。 一人は、ラグビー南アフリカ代表チーム“スプリングボクス”のキャプテンであったフランソワ・ピナール。そしてもう一人は、南アフリカ共和国という国そのものを率いたネルソン・マンデラ大統領その人だ。 特に際立っていたのは、モーガン・フリーマンが演じるネルソン・マンデラという「指導者」の、使命感と人生観だった。 27年間に及ぶ獄中生活を経てからの大統領就任。その初日の描写からこの映画は始まる。 当然あるはずの怒りや憎しみを抑えこみ、融和と寛容によって国家の混乱を治めようとする指導者の姿には、南アフリカ共和国にかぎらず、世界中総ての人々が教訓とすべき“在り方”が示されていたと思う。 そして、その偉大な指導者の人間性に触れ、国内において微妙な立ち位置の代表チームの主将として、「勝利」することの価値の大きさに共鳴していくフランソワ・ピナールの振る舞いが印象的だった。 偉大なリーダーの信念によって、人が、チームが、国が変わっていくということの本質を、この映画は伝えるのだと思う。 劇中、マンデラ大統領がこう言う。 「変わるべき時に私自身が変わられないなら、人々に変化を求められません」 必ずしもリーダーという立場にあろうがなかろうが、変わるべきは常に自分自身ということなのだろう。 【鉄腕麗人】さん [ブルーレイ(字幕)] 7点(2016-09-04 18:49:16) (良:1票) |
55.マンデラ大統領の人生一本に話を絞って見たかった。 【miso】さん [地上波(吹替)] 5点(2014-02-15 19:54:20) (良:1票) |
54.人種の垣根を越え、新生南アフリカ共和国を纏め上げる事に情熱を傾けるマンデラ大統領。人種間のわだかまりを抱えつつも大統領警護という同じ目的に向かって協力する警護官たち。ワールドカップでの勝利を目指しつつ、マンデラという人に思いを致さずにはいられないラグビー主将。さらにはワールドカップが始まり、スタジアムを埋め尽くす人たち、スタジアムの外の人たち、あらゆる人々の間に「絆」が生まれていく。それを象徴するように再三にわたり登場する「握手」のシーン。ってな訳で、多層的に仕組まれ、キモチいいくらい色んな工夫が凝らされた作品な訳でして。でも、題材が記憶にも新しい、95年南ア初出場・初優勝のあの大会。この映画のライバルは、他の映画などではなく、「実際の試合の方が感動的なんじゃないの?」ってこと。実際、映画でラグビーの試合を楽しもうなんて考えちゃうと、そりゃま、ちと物足りない。「ラグビーを楽しむ」映画じゃなくて、「ラグビーをとりまく人々」を楽しむ映画だねこれは。おそらくはラグビーにしか関心の無かった主将ピナールは、マンデラとの交流を通じ、「許し」という事を考えずにはいられない。その一方、ここで描かれるマンデラにとっては、ある種の“計算”の上での「許し」でもある。ただそれは、国をまとめあげるという情熱に基づいた打算であり、その情熱は、彼が休まずに走り続けていることで(警護官が音を上げることで)示される。良心だとか正義だとか、そんなんじゃなくて、あくまで一人の男の「情熱」が、周りを変え、ワールドカップ優勝を呼び、ついには国そのものを変えていく。このエゲツ無さがやっぱりイーストウッド作品、なのかな。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-10-29 22:52:34) (良:1票) |
53.マンデラ側とラグビー側のどちらに重点を置きたかったのかがはっきりせずに、しかもこの両者が物語としても融和していない(マンデラがそこまでラグビーにこだわった理由や背景がほとんど描写されていない)。もっともそれ以前に、イーストウッドがこのような優等生的素材を選択したこと自体が驚きなのだが。せっかくなら、むしろSP側を主体としてそこから見た物語を構築した方が、発展性があったと思う。 【Olias】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2012-06-12 00:26:52) (良:1票) |
52.アパルトヘイトを乗り越え、スポーツを通じて国がひとつになる息吹を与えたマンデラ大統領の自伝映画・・・となると、もしイーストウッド以外の監督が撮ったらきっともっと冗長で、壮大さを演出した作品になったと思う。 そこをイーストウッド監督は人種差別問題に関しても、ラグビーに関しても、本当に映画として必要な部分だけ的確に抽出して描く。 この作品のテーマは、「赦し」や「詩、歌」によって呼び起こされる、まさにシンプルな「人間の力」。 テーマをシンプルに絞り込むことで、本作は説教臭い伝記映画ではなく、素直に感動出来る映画に仕上がっているのだと思う。 毎回作品を観て思うのだが、イーストウッド監督は本当に役者の「いい表情」を撮るのが巧い。そしてやはり監督ならではの、所々にホロリとさせられるさりげない演出も散りばめられており・・・・・とても感動出来る、素晴らしい作品でした。 【おーる】さん [DVD(字幕)] 9点(2011-02-11 10:35:47) (良:1票) |
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51.実話がもとになっている映画は興味を引くエピソードに乏しく、途中で飽きてしまう事が多くなりがちです。 しかしこの映画はストーリーに無駄が無く良くまとまっているせいか、最後まで楽しく見ることができました。 テーマは黒人の人種差別で、見せ方が上手く素直に感動できました。黒人差別があった国の人が見ると、もっと違った感動があるのではないかと思います。 【アシュ】さん [ブルーレイ(字幕)] 7点(2011-01-02 01:52:16) (良:1票) |
50.信頼のイーストウッド印はまだまだ健在!ベタでベタでどうしようもないくらいにベタなんだけど根底にある漠然とした「優しさ」のためか、伝えたいことがしっかりしているせいか、揺らぎのない、どっしりとした感動作に仕上がっております。 あと、マッド・デイモンはいい役者ですね。 【bolody】さん [映画館(字幕)] 6点(2010-03-13 20:09:17) (良:1票) |
49.スポーツものは動感を感動へ繋ぎやすい題材。わだかまりがある関係を繋ぐものは共通の目的。そんなモチーフを国家規模で見せてくれます。ベタな手法だけど、上手くまとめている。反目していた者たちが喜びを分かち合うシーンには胸が熱くなる。モーガン・フリーマンって、何気にネルソン・マンデラ氏に似ている。それはけっこう大事なことだったと思う。マット・デイモンは最近の他の映画で太ったなぁと思っていたんだが、この映画のためだったのかな。その体格的存在感も含めて好演でした。マンデラ氏の赦しの精神は、マット・デイモンがひとりで肉付けしたようなものでした。マンデラ大統領の時代に比べて、今の南アフリカはかなり荒んでいるようです。殺人事件と強姦の発生率が世界最悪で、国民の4人に1人がHIV感染者って異常です。今作のラグビーワールドカップが和解への契機になったように、今年のFIFAワールドカップが治安好転への契機になることを願います。監督の想いは、この国に再び世界の目が向くことにもあったように思います。 【アンドレ・タカシ】さん [映画館(字幕)] 6点(2010-02-18 01:32:26) (良:1票) |
【TERU】さん [インターネット(吹替)] 10点(2023-10-12 21:37:23) |
47.高評を目にし 鑑賞..序盤は良かったけど..物語として 物足りない..なぜ チームが強くなったのか、その過程がまったく描かれていない..そこ 大事でしょ! 残念.. 【コナンが一番】さん [DVD(字幕)] 6点(2022-11-13 09:12:37) |
46.ラグビー映画のつもりで見始めたのにマンデラ物語が始まって驚いた。 でも、心に響く言葉がいくつもあって、それはそれで良かった。 序盤は当時の出来事を淡々と描く感じで、落ち着きのある雰囲気が好印象。 終盤に向けては選手も応援する国民も徐々に盛り上がって行ってとても感動的でした。 ラグビーが国民の心を1つにして行く光景に自然と涙が零れました。 とんでもない大差で負けていたけど、日本もこの大会に参加していたことが少し誇らしかったです。 【もとや】さん [インターネット(吹替)] 8点(2021-05-07 11:03:59) |
45.マンデラ大統領とラグビーチームがつながるとは知らなかったし意外だったので、結末は容易に見当がついてしまうものの最後まで興味深く見ることができた。 【飛鳥】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-05-01 22:41:34) |
44.この映画は、政治的偉人の映画とスポーツ映画を融合した、歴史映画という、どこかが必ず失敗して偏った感想になってしまいそうな内容なのに、 どれもうまくまとまっていて、さすがはイーストウッドとしか言いようがない、すばらしい出来の映画でした。 マンデラ大統領で泣き、ラグビーで泣きと感動しまくった映画です。 ぜひ、ラグビーワールドカップ2019日本大会の前に見て欲しい映画ですね。 【シネマファン55号】さん [インターネット(吹替)] 8点(2019-01-08 14:07:29) |
43.ラグビーチームがなぜ急に強くなったのか、いま一つよくわからず。白黒混合の警備員チームによる対立から融合への流れも、いま一つ中途半端。マンデラの倒れるほどの多忙ぶりも、黒人がラグビーに傾倒していく過程も、いま一つ伝わってきません。しかしM・フリーマンっていい役者だなと、あらためて感じます。 それに、ラグビーの試合の描き方が秀逸。M・デイモン以外、役者がラグビーの猛練習をしたのか、選手が役者として参加したのか、それとも何らかの合成なのかは知りませんが、すごく自然で迫力がありました。 そしてもう1つ、ラストの試合終了後からエンドロールにかけて流れる曲(ホルストの「ジュピター」をアレンジしたやつ)が実にいい。テーマにピッタリで、ちょっとアフリカ風で、けっして大げさではないところが素晴らしい。この曲を聞けただけで、すっかり満足してしまいました。 【眉山】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2016-07-21 22:53:17) |
42.スポーツの政治利用というかナショナリズムの高揚には反対の立場なので、複雑な思いで見ていたが、まあこの場合は民族問題が関係しているので仕方ないのかなという気もした。マンデラはある種の寛容の精神により、ラグビーを上手く利用したのだろうと思う。 ラグビーは基本的に上流階級が行う閉鎖的なスポーツなので、それが瓦解していく過程は丁寧に描かれていたと思う。そもそもラグビーは国際大会になじまないし、南ア大会はW杯3回目で、ファンの関心はそれほど高くなかったと思う。それは今でも変わらないし、決勝トーナメントにも出る可能性がほとんどないのに、なぜか2019年に日本で開催するけど、結果的には盛り上がらずに、世界に恥をさらす事になるんだろう。 今は日本代表にも複数の多国籍外国人選手がいて、以前よりは強くなったがそれもどうなんろうという気もする。もう国際大会で国とか民族がどうのこうのいう時代ではないし、そういう意味では歴史的イベントとしての記録映画的な価値はある。ロムーはそっくりで本人かと思ったが、俳優だったとは。 |