4.『ジョニー・べリンダ』で口と耳の不自由を演じたジェーン・ワイマンが、本作では目の不自由を演じる。
宗教的主題という点でも通じており、本作では神格化された高徳の医師は表象されることがない。
ストーリーは通俗的ながら、屋内の人物に影を濃く落とすラッセル・メティのローキー画面の艶によってヒロインの失明のドラマと相乗させ、しっかりと映画にしている。
特に舞台をスイスへ移して以降のホテルのシーンは、暗がりの中にランプの灯りやヒロインの衣装のワインレッド、ライラックの青紫がよく映えて艶めかしい。
前半の湖畔のロケーションも良いが、単調になりがちなセット撮影パートも背景奥に窓外の風景を採り入れた多層的な構図によって画面を充実させている。
クライマックスの手術室上方のガラス窓に、執刀するロック・ハドソンの反射像と、それを見守るオットー・クルーガ―の像が重なり一体化するショットがその白眉だ。