1.夕暮れどき、真直ぐに伸びる一本道を父親が去っていくのを見送る少女。
夕陽を背にした彼女の影が長く伸びている。
父親が小さな点となり、その姿が見えなくなるまで、
彼女は延々と立ちつくしながら何度も手を振る。
その何度か繰り返される小さな身振りと光の推移が、寡黙な時の流れを意識させる。
ラストの宵闇の中を走る列車の望遠ショット。
薄暗い画面の中に列車の吐く白煙が拡がり、滲んでいく。
ショットの長さがそうさせるのか、それとも静寂ゆえか、
寡黙な本作の中でもこの二つのイメージは特に鮮烈で忘れ難い。
ポルトガル北部の山岳地帯。
機織りのリズムや、川遊び、寺院での祈祷など、
映される風土、風物、衣装はそれぞれ極めてローカルでありながら、
同時にその情景は時代と場所を超えた普遍のノスタルジーをもって迫ってくる。