3.これまでこんなチャーミングなケンローチ作品があったっけ。優しく爽やかで、軽やかで微笑ましい。カントナ作戦とはつまり、リスクを恐れず挑戦する気持ち。そこにはテーマとして仲間を信じることや観客を喜ばせることがあった。ぼくは観客、彼らはカントナ。
エリックの中にもカントナがいて、彼の力強くて健気で、無条件な愛情が本当に気持ち良かった。
自己啓発して現れたカントナは、自分自身。無条件で自分を愛してくれるのは自分自身以外の何者でもない。
自分でみずからの背を押す、誰もがそうやってでしか決断し、前へは進めない。
ケンローチがいつも教えてくれる事と、根底は変わらない。イギリス社会で働き、家庭があり、苦しみ、迷いながら生きる庶民の話。ただ、憎しみや妬み、恨みのベクトルの向かう方向やその強さをちょっと変えただけ。
今後もケンローチさんには、この作品のような作風の映画をたまに描いて欲しい。