1.今作の魅力は、主人公と共に「子どもの頃の夏休み」を過ごせることにあります。
そこにはやれ環境破壊への批判だの、やれ憎たらしい悪役などは存在しません。
展開はとことん甘酸っぱく、なおかつ繊細に子どもたちの内面を描いているのです。
主人公の少年は昭和52年にタイムスリップしてしまい、そこで「ひと月だけ」の夏休みを過ごすことになります。
秀逸なのが、「時間制限」があることです。
もちろん夏休みがいつか終わってしまうのは当然のことなのですが、この主人公の場合はちょっと違います。
なにせ、今いる場所はいずれ「ダムの底に沈んでしまう」のです。
そこに住む人たちも、もうすぐここを離れないといけないことを知っていて「これが最後」と思い、今を楽しんでいるのです。
主人公は、はじめは「すぐ帰りたい」と思っているのですが、村に住む人たちと楽しい日々を過ごしているうちに、そうは思わなくなります。
ひと月の冒険を経て、「いつか終りを向かえてしまう」を知り、成長する主人公に、自分はすっかり感情移入をしてしまいました。
ノスタルジーに浸れる反面、本作に切なさを感じるのはこの「終わり」へのカウントダウン、焦燥感が描けているからでしょう。
また、サブタイトルは作品と相反するように「『永遠の』夏休み」となっています。
逆説的に思えるこのタイトルに、観たあとは想いを馳せてみるのもいいかもしれません。