32.「差別」この人間社会における普遍のテーマに対して、真っ向から取り組み、差別の構図に肉薄した、骨太な社会派映画である。私の心に深く残っている作品だ。 「差別的な行為を傍観することはそれに荷担したことになる」本作の中でグレゴリー・ペック演じるフィルは言う。 至極尤もで反論の余地などない。 しかし、このような「正義」を振りかざすことは、また次の争いや差別の種になるということも、一方で悲しい現実であるということは言えないだろうか。争いは常に正義と正義のぶつかり合いである。 「差別」の原因・背景については掘り下げることがなかったという点もやや残念だ。 とはいえ、先述したように、決して浅はかなものにはなっていない。 この難しいテーマを、極めて真面目に誠意をもって取り組んだ本作を、私は称えたいと思う。 翻って、この素晴らしい作品を観て、カザンの生涯を思うとき、あらためて思うのだった。「正義とは自分の良心にこそ、突きつけるものだ」と。 【poppo】さん 8点(2004-04-20 16:59:10) (良:2票) |
31.反ユダヤ主義に関する連載を掲載するにあたり、ジャーナリストである主人公のグレゴリー・ペックがユダヤ人になりすまし、その苦悩を自ら経験することによって差別がどこに存在するのかと言うことを暴いて行く非常にストレートなコチコチの社会派ドラマ。この映画の肝はグレゴリー・ペックではなく、その婚約者の女性にある。つまり、積極的に差別をしていない自分には罪がない、自分はリベラルだと思っている私のような人間である。「沈黙していると言うことは現状を認めていることだ」と言うことをこの映画で教えられた。これは何も差別問題に限ったことではない。例えば選挙。或いは戦争。「自分ひとりが言ったところで・・」と沈黙したなら後から文句言う資格なんて無い。自分も同罪なのだ。 【黒猫クロマティ】さん 7点(2003-03-06 11:22:54) (良:2票) |
30.40年代後半がひしひしと匂い立つ。アメリカとしては戦勝後の高揚、アメリカの正義の確認。ユダヤ人にとってはアウシュビッツの被害記憶がまだ生々しく、シオニズム運動の加速からイスラエル建国への高揚(この年にパレスチナの分割を国連が決議し、翌年独立)。と1947年に生まれるべくして生まれたフィルムかもしれない。その年の限界も当然あり、ホテルの前に立ち止まっただけで排斥されていただろう黒人はまだ視野に入ってなく、一人も登場しない。「見て見ぬふり」どころか「見えている」ことにも気づいていない(さらに海の遠くのパレスチナ人も)。また主人公をユダヤ人ではないWASPに設定してあるところも、絶妙の趣向のようでいて隔靴掻痒の感もあり、「自分たちの問題と捉えてほしかったからだ」という言い訳を用意しているだろうが、多くの観客であるWASPがユダヤ人に説教されることへの心理的抵抗を配慮したからではないか(こういうふうに異教徒であるべき主人公が強引にWASPに設定されるのは、最近の『アバター』にまで続く)。そういう40年代のアメリカの良心とその限界を知ることができる貴重な作品である、しかし映画としては面白くない。キャシーが「お説教は聞き飽きた」と怒るところで唯一ドラマとしてワクワクしかけるのだが、深くえぐるまでには至らず、けっきょくG・ペックの正義に飲み込まれていく。ペックが言ってることは実に正論で、そうやって少しずつ社会は良くなっていくのだろうし、こういう主張の映画が作られるアメリカの社会を尊敬はするが、贅沢を言うなら映画に期待するのは、演説よりもその正論を阻んでいるものの解析のほうなんだ。それは「正義を行なう勇気の欠如」だけで片づけられるほど簡単なものだろうか。それとあと一つ、アメリカ映画における母親の強さには独特の芯のようなものがあるなあ。開拓時代の「一家を守った母」の記憶にまで通じているのか。 【なんのかんの】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-09-12 09:55:20) (良:1票) |
29.ハリウッドはもともとユダヤ移民が作り上げたアメリカンドリームだから、その啓蒙活動みたいな1本。芸能に秀でていたユダヤ人と、「正論」派の新聞社とは水と油。WSAPのペックを使ってユダヤ人系の主張を映画にして、オスカーをさらったのは、啓蒙活動の「上がり」でした。同年の「殺人狂時代」と見比べるのも一興。 【FOX】さん 5点(2003-06-22 21:33:20) (良:1票) |
28.ご立派。ひねくれた見方をすれば、傲慢。つまり、差別する側の人間(主人公)が、被差別側(ユダヤ人)のふりをするというのは、結局上から見下ろしている、低いところへ下りていくという印象を禁じえない。「差別の実態を知る」なんていっても、そんなことはユダヤ人にしてみたら「何を今さら」だろうし、身をもって体験しないと分らないということ自体が問題。ユダヤ人のふりをすることによっていかに屈辱的な扱いを受けようと、正体を明かしてしまえば彼はまた以前の生活に戻れるのだから、所詮それは疑似体験に過ぎないわけで。なんだか動物愛護団体のような不遜な感じを受ける。乱獲するのも人間の傲慢、保護するのも人間の傲慢でしょ?それとも罪悪感? まあ、根が深い問題だけに、エリア・カザンのその後も含めていろいろ考えさせられる作品なのは間違いない。 【愚物】さん 6点(2003-05-02 12:21:42) (良:1票) |
27.日本にも様々な差別が昔からある。それは人種差別だけではなく同民族内にだって差別はある。人は自分より劣っていると思う人を知らず知らずに見下したり哀れんだりしている。そして少しの優越感に浸ったりしているものだ。身近なところで言えば、イジメもそうだろうと思う。イジメをする者、される者、関わる者、そして関わりたくない者。この図式が大きくなって人種差別や下手すると戦争の様な規模になるのだと思う。自分はキャシー同然に"関わりたくない者"だったけど、できるだけ関わる者で有りたいとは思っている。でも声高々に言いすぎても逆に差別を意識しすぎる様な、うーんー、、、って事を改めて考えた作品。そしてグレゴリー・ペックのハンサム感がピーク時かも!!かっこいい! 【movie海馬】さん [地上波(字幕)] 6点(2013-01-21 02:38:23) |
26.ユダヤ人差別を告発するために主人公の作家さんが、しばしユダヤ人としての生活を送ってみる、というオハナシ。当時としてはこのテーマを取り上げたのは画期的だった、と言われればそうなのかも知れないし、またこれが当時の限界だった、と言われればそうなのかも知れないけれど。でもやっぱり「浅すぎる」よね。時代の切り込み隊長を買って出るなら、それこそ“肉を斬らせて骨を断つ”というような、相応の覚悟が必要なのでは。「根深い問題でもありますし、まあこの程度から始めてみましょう」的なヌルさが、完全に作品をスポイルしているように思え、豪華で手の込んだ映画の作りが、かえって虚しくもあり。要するにオスカーを獲っちゃう程度の「手加減」が本作の泣き所。コメディとして笑いの中に風刺を効かせるでも無し、生真面目な作りの一方で、冒頭から「パパ、再婚しないの?」なんぞと、通り一遍の恋愛モノを予告してみたり。肝心の差別問題については、映画の中で映画的に描写されることも殆ど無く、軽いイジメラレ体験を息子に語らせてみるあたりが関の山。んなコトばっかりやってるから、後で(不本意であったとは言え)赤狩りにも加担するんでしょうが、と言いたくもなる。石をぶつけられる覚悟が無ければ、時代に楔を打つことはできない。この作品の存在自体が、“紳士協定”の上に乗っかっているような感じがして仕方が無い。無論、かく言う私こそ、そんな大それた勇気など持ちあわてはいないが、その勇気の無さをしっかり自覚して生きていきたいとは思っている。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 4点(2011-12-04 10:16:54) |
25.差別と偏見を題材にした、グレゴリー・ペック主演の社会派ドラマ。 タイトルやあらすじから、何となく堅そうな映画というイメージを抱くけど、 ひねくれていなくてとても鑑賞し易い。序盤の流れがその後の展開に興味を抱かせるし、 ヒロインとのロマンスもうまくテーマへと繋げていて、なかなかうまい構成だった。 ラストはちょっと気に入らなかったけど・・・。 正義感溢れる主人公を演ずるグレゴリー・ペックは、この役柄にぴったり。カッコいい。 【MAHITO】さん [DVD(字幕)] 7点(2011-08-29 12:09:09) |
24.意義深い映画でした。タイトルの意味は、かなり自虐的ですね。第二次大戦のすぐ後に、このような映画を作る、アメリカの懐の大きさに脱帽です。グレゴリー・ペックの「正義の味方」的イメージは、この映画から作られたのでしょうか?単一民族の日本人には、なかなか理解しがたい話題でもあります。 【shoukan】さん [DVD(字幕)] 7点(2010-07-03 23:18:26) |
23.このテーマに取り組んだことは評価できますが、訴えるインパクトに欠けたような気がします。 ラストは安易な終わり方に落ち着かせていますが、このテーマはそんな簡単なものではないはず。 肝心の主人公の体験する描写が思ったより少なく、もっと泥にまみれさせてほしかったです。 【午の若丸】さん [DVD(字幕)] 5点(2010-05-04 13:37:38) |
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22.冗長で、教科書的だが、見どころもたくさん。「紳士協定」の意味と閉鎖的なアメリカの一面を見ることができた。Father Peckは相変わらず渋い。 【HRM36】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-04-19 14:30:06) |
21.描写自体は至って観念的であり、楽天的とすらいえるかもしれないが、この作品に強烈な印象を残しているのは、なりすましの案を思いついたときの一連のペックの演技。それが、設定に溺れないある種の生々しさをその後まで残している。それと、作品テーマの本質をついたタイトル(邦題も含め)が見事。 【Olias】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-04-18 01:08:09) |
20.グレゴリー・ペックの婚約者の描写がよくできています。自分もああいう偽善者なんだよな、なんて思います。世の中の反応みたいなものを最後に入れてほしかったです。 【色鉛筆】さん [地上波(字幕)] 6点(2009-01-20 20:05:25) |
19.本当は退屈過ぎてもっとマイナス評価したいんだけど、この時代の映画を評価するのは難しいので、無難なこの点数。 テーマは重いのに、ストーリーが単調で奥行きも無くベタベタ。ラストも「そんなもん?」って感じで終わってしまう。 美男美女の在り来りの台詞と演技を延々と見せられて疲れた。 まあ、この時代の映画はたいていこんな物だけどね。 稀にそれをカバー出来るだけの超秀作もあるけれど、この映画はそこまでではなかった。 【♯34】さん [DVD(字幕)] 5点(2007-09-12 10:41:52) |
18.「踏まれた足の痛みは、踏まれた者しか判らない」という言葉がありますが、この映画を見て真っ先に頭に浮かんだのがこの言葉でした。非常に難しいテーマですね、この「差別」という問題は・・・・・。 人間に生存本能がある以上、差別意識(見下す意味だけではなく)はどうしても生まれてきますからね・・・・。当然、差別は良くないものだとは解っていながらも、自分たちの世界を守っていきたいという防衛心が、題名にもある「紳士協定」という歪んだ意識を産んでしまうのですから。 そういう中で、この作品の訴えかけるメッセージには心を動かされるものがありました。ちょっと理想主義的な感じもしますが素晴らしい作品だと思いました。 【TM】さん [インターネット(字幕)] 9点(2006-09-10 21:43:29) |
17.キリスト教とユダヤ教の違いにほとんど言及してないのは、 欧米ではそれが常識だから。 日本ではとても理解されない内容です。 なぜユダヤ人は差別されているのか? それがわかってないと語られる言葉の全てが茶番。 そこに人がいる限り、差別はなくなりません。 |
16.テーマはいいんですが、いまひとつ敷居が高い感じで楽しめませんでした。評価が分かれそうな気がします。 【H.S】さん [ビデオ(字幕)] 5点(2005-12-24 00:47:31) |
15.いやぁ……熱い映画だぜっ! もっと「うおりゃあぁぁ!」って感じの主人公が好きだけど、彼は育ちがいい人だからね。やっぱり、こういうメッセージを投げかける人が平均以上の生活を営んだ上で「大きな志」を持って「これはいかんのだっ!」って言っても悲しいかな説得力はダウンするでしょ。そこがこの映画の「あと1歩」な感触を残してしまう理由だと思う。でもこういう人がこういうメッセージを投げかけるというのはとても素晴らしいことだと思う。とにかく!熱い映画なんです! 【ようすけ】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2005-11-21 01:50:01) |
14.グレゴリー・ペックに限らず、この時代のアメリカ映画の主役ってやけに傲慢で自己チューなところがあってあまり好きではない。しかも内容がないようなだけに、よけいにそれが気になってしょうがないのである。これといい『シンドラーのリスト』といい、ユダヤ人問題は難しい。 【とかげ12号】さん [CS・衛星(字幕)] 4点(2005-11-20 20:39:33) |
13.主人公の正義感は素晴らしい。誰にも真似できない。私も、差別は好きではないしありえないことだと思っているが、ここまで徹底できない。 1947年当時にはすごく斬新な映画だったのだろうと考えさせられた。 【T橋.COM】さん [DVD(字幕)] 7点(2005-08-13 06:15:15) |