7.ミステリーですしネタバレ無しで感想を。
評判のいい本作ですが、個人的にも今までの本格ミステリー映画物では1番の出来だと思いました。
何がいいってこの映画、オリジナル作品な事。
有名ミステリ小説の映画化の場合「原作読んだからオチ知ってる」問題がどうしてもつきまといますし「原作と比べると」みたいな問題もどうしても出てきます。
オリジナル脚本のこの映画にはそういう要素が一切無し。純粋に映画を楽しむ事ができます。
(本を一切読まないような人はそういう問題は起きないのかもしれませんが)
また書籍を映画化したものではないため、展開が最初から映画用に最適化されています。
一例をあげれば、映画化したときどうしても退屈になりがちな、一人一人への聴取シーン。
こういうシーンは単調なためどうしても飽きちゃうし、しかも会話だけだと観客が状況をわかりづらかったりするのですが、映画をご覧になった方はおわかりの通り、ここも普通とは違って飽きさせずしかもわかりやすい造りになっています。
随所にそういう映画に最適化されたシーンがあり、これは映画用オリジナル脚本ならでは。
しかも古典的本格ミステリのていをとりながら移民問題と階級問題を織り込み現代風にしっかり作りこまれていて、最近にしてはやや長尺のこの映画、最後まで集中力を切らさず一気に観ちゃう、そんな映画になっています。
犯人に関しては、途中の展開からはおそらく4人のうちの誰か、さらにキャスティングから実際はそのうち2人のどっちか、またはその2人の共謀しかありえない…というのはミステリ好きなら読めてしまい、しかも実際その通りだし推理にツッコミどころもなくはないのですが、しかしオリジナル脚本のミステリ映画としては十二分の出来で、俳優陣の演技もすばらしく、とにかくよく出てきている、その一語につきます。
先ほど「キャスティングから」と書きましたが、ミステリ映画の犯人は基本的に有名俳優が担当します。(まれに例外があってびっくりしますが)
そのため、大型ミステリ映画の場合、本映画のように「どこかで観たような有名な俳優がずらり」という事になるわけで、これは「キャスティングから犯人を推測させないため」しょうがなくそうなっているわけです。