1.台湾の大都市、台北市。鉄道や高速道路が行き交い、一見無機質に見える台北の街並みの遠景と、
人々が密集して暮らす生活感あふれる路地。その両方を捉える映像それぞれにいい味がある。
そして登場人物それぞれに家族や今の人間関係と、今の自分に大きな影響を与えている過去がある。
終盤に「距離が近すぎると人は衝突する。」という台詞が登場しますが、
登場人物それぞれの人間関係と、そこにある目には見えない距離感や孤独感、隙間風のようなものを実に巧く描き出しています。
その一方で亜熱帯の暑気を帯びた空気やそこで生きる人々の熱を感じさせる台湾映画らしい質感がいい。
大都会の遠景と、その中で生きる人々のごく近くに見える姿。
迷惑でしかない「ジョニーに代わってよ」と頻繁にかかってくる間違い電話をある意味受け入れているかのような主人公の女性。
遠景を見せられるとひっきりなしに車や鉄道が行き交い、そこに人同士の関りが見えてこない大都会。
しかし近くに寄って行けば、一見もう終わり?というラストにはエンストした車を脇に寄せようと人々が助け合う声が聞こえる。
「距離が近すぎると人は衝突する」とは言うものの、やはり人は何らか関わり合わなければ生きてはいけない。
作品は3人の主要登場人物の今後にこれといった解決策は見出しませんが、そんなことを感じさせるラストが印象的です。