36.この映画は小津後期の作品で、全作品の中でもカラー時代の作品は評価が「晩春」「東京物語」のころほどは高くないように思います。 特にこの作品は旅芸人もので、いつもの娘の結婚がどうのという話とは全然違います。 俳優も京マチ子、若尾文子、中村鴈治郎など常連でない俳優がメインなので違和感をもたれる方も多いかと思います。 私は小津の映画を見ても、あまりにストーリーが単純でその時感動しても、後で話の内容をすぐに忘れたりするのですが、浮草に関してはストーリーもいつも以上に展開があり内容を忘れることもありません。小津作品のなかでも最もエンターテイメントしている作品ではないでしょうか? 中村鴈治郎は癖のある役が多いですが、京マチ子、若尾文子を罵倒して殴ったり結構笑えます。京マチ子、若尾文子は最高の美しさを見せ、いつもの小津映画の常連女優とは異なる華やかさが堪能出来ます。 小津の異色作ではあると思いますが、これまた傑作です。 【仏向】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2007-07-31 22:03:23) (良:2票) |
35.小津自身のサイレント時代の作品『浮草物語』の忠実なリメイク。土砂降りの雨の中で軒下を挟んで罵りあう有名なシーンもオリジナルに出てくるが、何と言っても違うのは、撮影が宮川一夫で、総天然色!そこら辺に置いてあるビールの空きビンまでもが艶やかなのだ。 【なるせたろう】さん 8点(2002-12-27 17:42:17) (良:2票) |
34.大映というだけでこうまで変わってしまうのか。それとも宮川一夫の影響か。いや、脚本の時点でいつもの小津映画ではない。それはこの作品が大映であるからであり、大映であるからには宮川になるからということなのかもしれない。映画冒頭の灯台を映した画。それだけならいつもの風景から始まる小津映画だ。しかしその灯台を構図とアングルを変えて何カットも見せてゆくとなると話は違う。意味はわからないがそこからしていつもの小津ではなく、ゆえにそれはいつもの小津映画ではないことのノロシとしてあるのだと思う。男女が罵倒しあう様を小津独特の切り替えしで見せるとどうしてもどこかコミカルになるところを中村鴈治郎と京マチ子と激しい雨が泥沼のような感情の暴露にしてしまう。キスシーンはアップで撮っちゃうし、若尾文子は感激して大袈裟に涙を流しちゃうし、いちいちドラマドラマしている小津らしからぬ躍動ぶりに驚かされる。釣りをする親子の後姿や杉村春子の合いの手のような会話はいつもの小津調であり安心感がある。するとこの安心感を提供する世界の崩壊はまさに小津がよく描く家族崩壊なんだけど、その崩壊の担い手として大映的抑揚のドラマを持ち出したのだろうかなどと勘ぐってみたりするのもまた楽しい。 【R&A】さん [DVD(邦画)] 7点(2010-06-07 15:10:01) (笑:1票) |
33.後期小津印がそこかしこに感じられる作品。 『秋刀魚の味』でもそうだったけど、小津カラーは凄まじく美しい。 その美しさは小津固有のもので、小津にしか撮れない色合いである。 そこに宮川一夫が撮影担当とくれば、まさに国宝級の美しさだ。 話の内容としては、『浮草物語』の自身リメイクということで、目新しさは感じられないものの、小津がリメイクまでしたストーリーだけあって、重厚でいて斬新な面白さ、そして人生の陰影がそこかしこに感じられ素晴らしい。 中村鴈治郎は毒を含んだ男を絶妙に演じてみせている。 アメリカ映画の様に、ただの悪役で片付けることなく、その裏に見え隠れする人としての優しさみたいなものまで表現しているから凄い。 京マチ子は外見的に苦手な女優だが、本作では驚くほどに魅力的に見えた。 口は悪いが、情にもろいといった浮世の女性を、これまた見事に演じている。 その他、川口浩の若さ溢れる熱演、杉村春子の抑えた演技、若尾文子の色気、野添ひとみの可憐さ、そして笠智衆のご愛嬌カメオ出演、と見所にいとまがない。 小津作品の中でナンバー1とは思わないが、その完成度や奥深さという点において、上位にランクされるべき力作であろう。 【にじばぶ】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2009-07-28 00:01:21) (良:1票) |
32.昭和34年頃を総天然色でスケッチしてくれた佳作。懐かしい役者の演技から、背景にいたるまで、絵画を見るかのように観賞させてもらいました。 【ジャッカルの目】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-01-02 00:42:18) (良:1票) |
31.これは「うちわ」の映画。京マチ子が、若尾文子が、杉村春子が、中村鴈治郎が、道行く浴衣姿の娘が、うちわを扇ぎます。緩やかに扇いだり、裏と表をゆっくり回したり、扇ぐしぐさに感情が滲みます。カラー作品は、風呂上りの京マチ子、川口浩を誘い込む若尾文子の艶やかな“色気”を画面にのせながら、芝居小屋の楽屋裏の雑然とした臭気、蚊取り線香やラムネやアイスクリームなどの夏の芳香を、小津安二郎はうちわで扇ぐようにフィルムの向こう側に届けるのです。若尾文子を小津作品で見ることができるだけで私には幸せなフィルムですが、挿し込まれるラムネのショット(ルビッチの「結婚哲学」のコーヒーとゆで卵を思い出した)に象徴されるように、じりじりとした夏を舞台にしながらも清涼な作品なのです。 【彦馬】さん [映画館(字幕)] 10点(2005-05-29 20:11:13) (良:1票) |
30.なんでそんなに絶賛されのだろう……。平々凡々な作品じゃないのかな。監督が死んでから持ち上げられすぎな気がするんだけれど。反面この作品の良さがわからない自分に落胆。くやしいです。まあ、自分が若いから幼稚だから面白さが分からないと考えて暫しの間、小津作品は観ないでおきます。封印です。 (ビデオ) 【komati】さん 5点(2004-02-24 21:41:57) (良:1票) |
29.小津が唯一宮川一夫と組んだ作品。いつもより映像がキリっとしてます。【なるせたろう】さんも言っておられる軒下のシーンなんか鳥肌立つほどキレイです。本作ではなんと言っても鴈治郎の会話のテンポが楽しい。聞いてて心地良いです。歌舞伎なんかだと世話物は特に会話のテンポを楽しむところがあるけど、その辺も小津は影響受けてるんでしょうかね。ラストも京マチ子がいじらしくてなんかホッとしちゃいます。 【黒猫クロマティ】さん 8点(2004-01-21 12:07:39) (良:1票) |
28.大映専属だった山本富士子に「彼岸花」(10点)へ出演してもらった返礼として、翌年小津監督が大映に赴き撮った唯一の作品及び唯一の自作リメイク。妖艶になる、あと一歩手前時期の若尾文子がなんとも可愛らしい。いや、京マチ子にせよ野添ひとみにせよ、女優陣みんなそれぞれにいい。大映現代劇特有の、あのねっとりしたカラーが小津監督タッチによって若干浄化されたようなイメージ。小津監督の他社作品「小早川家の秋」(宝塚映画)「宗方姉妹」(新東宝)を観ると、松竹作品全般に感じられる、窮屈な「縛り」みたいなものから、ほんの束の間解放されたかのような自由な空気感を感じます。もちろんその「縛り」が21世紀になっても評価が全く衰えない小津作品の真骨頂だとは思いますが、この作品とか観ちゃうと、息抜き的に他社でこしらえた作品をもっと観たかったなあとも思います。流石に東映とは合わなかっただろうけど。 【放浪紳士チャーリー】さん [DVD(字幕)] 7点(2023-08-26 07:53:34) |
27.小津作品としては、中レベルと思われるが、飄々とした鴈治郎と郵便局のシーンの若尾文子につきる。あのやり取りはないよ。あやや。こんなんやられたら、男はイチコロ。魅惑的なあやや。可愛いあやや。 【にけ】さん [映画館(邦画)] 8点(2018-12-26 22:43:21) |
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26.とにかく、役者の台詞回しや間合いが何とも間延びしていて単調で、少しも中身に入り込めない。役者が演技をしているというよりも、誰かに指定されたとおりにただ動いているだけにしか見えないです。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 2点(2015-03-27 03:21:18) |
25.単調な雰囲気にかかわらず飽きずに最後まで見ることができた。それぞれの人物を丁寧に表現できていておもしろい。寅さんの小津版を見ているようだった。 【ホットチョコレート】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2015-03-25 06:46:33) |
24.うーん、演技やストーリーなど、そこまで良いと思わなかった。旅回りの一座ってそんなにヤクザな商売って印象だったのか。 【noji】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2015-03-23 00:03:04) |
23.当時の価値観や身分感がぴんとこないので感情移入困難。この人の映画は、画はきれいなんだが、役者がものすごくへたくそに見えるのが難。 【みんな嫌い】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2015-01-02 12:27:45) |
22.テンポがようござんすねぇ、耳に残る心地よさと、美しい風景、行ったこともないのですが懐かしいと感じずにはいられなかったです。相性のよい映画でした。 【HRM36】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2014-12-25 17:55:08) |
21.『スクリーム』で「ホラー映画で“すぐ戻る”と言って出て行ったヤツが、帰ってきたためしが無い」ってのがありましたけれども、あの法則って、小津映画でも共通なんですね。川口浩に将棋で勝てない中村鴈治郎、必ず再戦するぞとやたら強調した後、階下に下りていくと、案の定、やってきた京マチ子と一大バトルを繰り広げることとなり、将棋どころじゃなくなってしまう、という寸法。そんなこんなで、本作、なかなかドロドロした愛憎劇なのです。目を三角に吊り上げて(ってこれは地顔だけど)中村鴈治郎がまくしたてる大阪弁と、小津映画のリズムとが、ハテ、噛み合っているのやら噛み合っていないのやら、いずれにしても一味違う雰囲気があり、これはもうひとつには本作が大映作品ということも関係してそうな、してなさそうな(なんか、大映と聞いただけで、松竹よりは、いいロケ撮影しそうな気がしてくるしなあ。実際、鄙びた地方色みたいなものは、よく出ています)。あるいは、旅回り一座の舞台裏が題材で取り上げられていることもあって、画面内に大勢の人物が動き回る場面がしばしば登場するのも目を引きます。モメにモメたお話を、ラストでいささかキレイにまとめ過ぎた感じも無いでは無いですけれども、ま、なかなかエエ話や、おまへんか。 【鱗歌】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2014-12-13 15:42:44) |
20.小津作品は過去に山田洋次監督推薦シリーズで2本ほど観ましたが、私には男女や親子間の人間臭い関係を艶っぽく描いた今作の方が面白かったです。この時代の邦画は棒読みのようなセリフが良く見受けられますが、今作でも演技を含めて清役の川口浩の不自然さが解消されていればもっと良かったように思います。 【ProPace】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2014-11-19 18:45:37) |
19.小津監督の大映作品ということで期待して観たのですが、期待以上の大傑作でした。 小津作品王道の家族ものというか娘の嫁入りを扱った作品は、面白い事は面白いのですが、パターンがやはりあるし、カットも似ているので数本観ているとあまり新鮮みがなくなってくるといいますか。 もしかしたら売れっ子でもあった小津監督は会社や世間からそういう作品を求められていたから、同じテーマで作っていたのかな、とこの浮草を観て思いました。のびのびと撮っている印象なんですよね…。 いつものカメラ目線正面アングルも上手い具合に微妙に目線が外れていて自然に感じますし(宮川一夫さんの手腕か)、中村鴈治郎を始め役者陣がとても魅力的に動いています。これは大映役者陣の小津監督に対するリスペクトなんでしょうか。 特に若尾文子さんが魅力的で、実は、若尾文子を一番かわいく撮ったのは小津先生なんじゃないですか!?とか思いました。 【大経師】さん [DVD(邦画)] 10点(2014-10-18 14:35:44) |
18.しっかし、関西弁で罵る様っていうのは、きょーれつに品がないなあ~。 【ケンジ】さん [DVD(邦画)] 8点(2013-02-15 17:28:33) |
17.たくさんある松竹の小津作品とは違う印象を持った。ここのレビューでそう思った人が多いことがちょっと嬉しい。 |