1.ローラ・スメットという女優の魅力を、どのように表現すればいいのだろうか。抜群の美貌なりプロポーションを持っているわけではないが、薄い衣服を身につけ、鋭い眼光でブノワ・マジメル(彼女にだけでなく母親・姉妹・さらには仕事先の顧客である老婆にまで振り回されながらもおいしい所はちゃんともらってくその「ツヨシしっかりしなさい」のツヨシ的な姿立ち振る舞いがとにかく見事。まさにはまり役)に迫り、かと思えば突然姿を消しブノワ・マジメルを狂わせる。この速度の緩急がそのまま「石の微笑」全編を通じて感じる印象へとつながるのだが、というのもヒッチコックを彷彿とさせるこの官能的なサスペンスにおいて、舞台となるフランス郊外の日常生活にふと生じる亀裂は、不可解な行動を続けながら不可解な魅力を発散するローラ・スメットの存在そのものであり、この不安定性が映画をコントロールする事で、映画全編が綱渡りの綱の上に乗っかって揺れているかのような感覚を受け取るからである。そんな搖動によって導かれるラストの戦慄といったら!超おすすめ。