9.手塚治虫や藤子・F・不二雄のSF短編にありそうなサスペンスとホラーとエモーショナルがギュッと詰まった“小話感”が小気味いい。
舞台設定から編集作業の詰めの粗さに至るまで、“低予算感”は否めないけれど、それ故の“掘り出し物感”もあり、満足度は高かった。
キャストも少人数で地味だが、やはりクリント・イーストウッドの息子であるスコット・イーストウッドが印象的。
ハンサムではあるが、独特の何だか“嘘くさい”風貌が、今作のキャラクター性に合致している。
善人か?悪人か?と中々判別がつかない雰囲気が、序盤の緊張感を高めていたように思う。
偶然にも、今年指折りの話題作「TENET テネット」に続いて“タイムパラドックス”ものを続けてみてしまった格好。
映画の規模やクオリティのレベルは比べ物にならないけれど、アイデアと表現方法の工夫で、タイムパラドックスを巡るサスペンスとドラマを生み出す映画的な巧みさは、決して勝るとも劣らないものだったと言えよう。
まさしく“親殺しのパラドックス”を逆説的に描いた顛末が導いた未来はどうなったのか?
果たして「彼」の存在はどうなってしまったのか?
“切なさ”も含めて、そういうことをつらつら考えていくのも、この手の映画の醍醐味だろう。