2.このカメラマン、ジェームズ・ナクトウェイの「戦争はたった一人にさえ許されぬ行為を万人にする」ぐらい、戦争に対するまっとうな疑義の言葉はないだろう。この言葉が軽く響かないために、その言葉が生まれる現場をたどる記録映画である。戦争写真家が常に直面している問題は、世界の悲惨を消費していく情報社会に対して湧いてくるシニカルな気持ちへの対処。子どもの泣き顔を求める社会にそれを提供することで食っている現実がある。でもシニカルになったって、それより大きな「敵」を利するだけだ、という深い決断が彼にはあるように思えた。悲惨の伝達者と自分を規定している。情報の受け手を信頼するしかない。パレスチナでの催涙弾の取材、インドネシアの硫黄鉱山労働現場での取材、痛みに耐えかね手で目を覆う姿が祈っているようにも見えた。その祈りに、受け手も応えねばならない。彼はその後、イラクで怪我をしたとニュースで読んだが、今はどうなっているのか。