1.まあ大らか~な作品です。朝寝朝酒朝湯が大好きで村の人々から<小原庄助さん>と呼ばれるある名家の地主を、大河内傳次郎が大らか~に演じております。まったくはまり役です。戦後農地改革により土地を失った地主のペーソスとユーモア・・・実際の旧家をロケーションとして撮影しているのですが、前半の金貸しが登場するシーン、後半の競売シーンでの横に横にと動くカメラ移動でこの家の風格がよく伝わってきます。没落しても頼まれたらイヤといえない庄助さんの旦那ぶり、人のよさをエピソードを重ねて描き、その合間に見せる雨のシーンでの傘や瓦の家紋を写したショットに過去へのノスタルジックな哀愁をのぞかせます。また庄助さんがロバに乗って出かけるショットに漂うユーモラスな雰囲気・・・私はこのロバのパコパコゆら~りとした歩みがこの映画の肝だと個人的には感じています。ロバだけをとらえたショットが何度も出てきますし、最後ロバをも手離した時に、そのロバと子どもたちが去っていくのをず~っと見送る庄助さんの後姿、ここは名シーンです。清水宏さんの自然でゆるりとしたタッチが、復興活力にあふれる時代の頬をふわりとなでたような作品でありました。