2.丁寧な風俗描写、あるいは薄暗い賭場のシーンの美しさ、障子に映る影。やはり一級の満足感を与えてくれる作品だ。義理と人情の葛藤はどちらかというと池部良のほうにあるわけで(もちろん健さんも「急所をはずしなすったね」はあるけど)、それだけこっちのほうが印象深い。仁侠映画内での任侠の道徳律は、すじを通す・カタギに迷惑をかけない・女を売るようなことはしない(→利益追求を第一にするのはみっともない)といったところで、現実のヤクザの対極としての「そうであるべきはずだったヤクザ像」なわけ。『仁義なき戦い』の暴力団より歌舞伎の白波ものに近い。唐獅子牡丹の1番と2番の間で合流するってのも、もう様式としての決まりになってるし。時代劇でチャンバラが始まるとけっこう退屈することも多いんだけど、仁侠映画ではまず引き込まれる。音楽が鳴らないストイシズムもいいんだろうな。