1.うんうん、ヒッチコックの映画みたいだった。そのうえジョーン・ベネットはファムファタルの匂いプンプン。ジャン・ルノワールの映画とは思えない。かわいい恋人をほったらかしにして人妻にのめりこんでゆくロバート・ライアンの異様な行動よりもその人妻の亭主チャールズ・ビックフォードの異様さのほうが勝ってるもんだから先が読めない。三人のうちの誰かが悪意を持った人間ならばそれこそフィルム・ノワールへと昇華するのだが、どうも一概にフィルム・ノワールと断言できないところがミソといえる。でもファムファタルはどうだろう。女に翻弄される男には何やら戦争の傷が影響されているらしき描写があるもんだから「女」そのものに宿るファムファタル性の強さがうやむやにされてる。もちろん狙いなんだろうけど、ここはもっと単純でいいような気も。ひとつの画、ひとつのシーンで怪しさをかもし、サスペンスを盛り上げる。このあたりはさすが。