1.最初のうちは「苦労の中でも頑張ってる」っていう映画界の内輪の自慢話みたいで、あまり乗れずに見てたんだけど、なんか途中から奇妙な味が濃くなってくる。話の枠組みから自由になってもいいんだ、っていう余裕というか脱線というか、夢やら幻想やらが侵入してくる。ロケ隊についてくる美保純のほうがいつのまにかロケ隊を引きずり出し、さらに映画の統合者であるべき監督も消えてしまうとなると、もう誰も責任を持って話の主導権を握らず、まるでこの映画全体が、劇映画から記録映画へと、映画史を逆にたどる旅の様相を呈してくる。森崎東のアナーキーぶりが頭をもたげてくる。逆回転で海から一同が出てくるラストに、映画誕生の瞬間への到着を見てしまうのは、考え過ぎと言われようと、ここまで旅を共にしてきた観客の義務だな。