3.伝記ものという枠があるせいか、ミュージカルとしての楽しみはこのコンビの他作品に比べて、ちと落ちる。前半はいいところもあるんだよ。駅でのタップシーンは、こじんまりしているけどやっぱ楽しいし、ドライブに誘うときの二人の心のゆらめきを、犬を小道具に使ってうまく見せる。あるいはプロポーズするときの、明るい部屋と暗い部屋の対照の妙。つまり結婚するまでは、普通のミュージカルものの型通りで手馴れているわけ。ジンジャーの下手な悪魔の踊りがあったりというサービスも含めて。ミュージカルってのは、非日常的な恋愛状態で一番ふさわしく、本来結婚で終わらせるものなんだなあ。生活のある二人の暮らしになると、肝心のダンスシーンがも一つ酔わせてくれない。監督のせいなのか振り付けのせいなのかは知らないけど、ダンスがダンスだけの表現で閉じちゃってるってことなのか。軍隊帰りの旦那と踊るとこが、まあミュージカルっぽいけど、あんまり高揚させてくれなかった。アメリカを転々としているシーン、地図の上で踊ってて、蟻のような群衆がうじゃうじゃと湧いてきて踊るってのは悪趣味でしたな。