1.部分的には田中正造をちゃんと対象化しているところもある。草野大悟が小作の苦衷を切々と訴えて離れていっちゃうとか。社会主義の煽動家の軽薄さなんかも、決め付けすぎてるけど、日本の社会派映画の中では面白い描写のほうだった。でもやっぱり全体として日本の社会派ものの基調である「嘆き節」からは抜け出せていなかった。心の深いところで無力感を「堪能」してしまっているようなとこが感じられるのよね。本当に勝ちたいと思っているのか、それよりも滅んで「恨みの鬼」になるのを望んでいるようなとこがあって(けっきょくそのほうが気楽で、江戸の町人時代から続いている「狂歌作って溜飲下げるだけで満足しちゃう」性癖)、日本人のこういう傾向って分かるからヤなんです。けっきょく理より情で動くの。製作当時は三里塚の強制執行と重なってある種の感慨もあったのだろう。天皇への直訴のところなんか、もっと盛り上げられそうなんだけど、左翼の作家としては天皇を最終判定者とする「直訴」の扱いは困るとこ。