3.黄金色に輝く銀杏並木の光が、街路を歩く主人公:砂田智昭さんの横顔を包む。
砂田さんが登る階段の背後で教会のステンドグラスが輝いている。
臨終を確認する音声が流れる中、街のシルエットとその背後に広がる
マジックアワーの淡い陽光が悲しいまでに美しい。
家族の交流を映し出す合間に点描される、光を伴った街・空の情景ショットが、
単に映像がキレイだとかいう事ではなく、映画の場面として印象深い。
8mm映像の中で笑う、ありし日の父の姿は誰が撮ったものか。
その粗い画調ならではのノスタルジックな美しさ。
病床で妻への愛情を伝えるシーンは恐らく、撮影者=監督不在のまま
録画されているのだろう。光量不足でザラついた画面だからこそ
夫婦二人だけの時間・空間を切り取ったこの場面はひときわ美しい。
日頃からカメラを向けてきたからこそ、自然体のままカメラを受け入れ、
何の衒いもなく被写体を生きる父。
そして砂田麻美監督を含めた家族それぞれが、被写体として素晴らしい。