1.タイトルバックの仰角ショット。
絡まりあう黒い枝々の合間から光を放つ薄日のイメージが映画の中で象徴的にリフレインされる。
生活感を滲ます家屋の質感と、中西部の寒々しい外気を伝える自然光主体の画面の感触がいい。
一癖も二癖もある登場人物たちの実在感と凄味。その佇まいだけで、主人公を取り巻くシビアな生存環境を語りしめる。
その過酷さの頂点にあるのが、壮絶なリンチを受け、左頬を無残に腫れ上がらせたジェニファー・ローレンスの痛々しい「顔」だろう。
それでも尚、擦り切れたミリタリー柄のジーンズにハーフコートを羽織り闊歩する彼女のタフで凛々しい相貌が素晴らしい。
淀んだ暗い沼の水面に落ちる月光の冷たい光と、チェーンソーのモーター音が苛烈に響く夜を彼女は越え、父の形見となった白いバンジョーを弾く幼い妹・弟と玄関前に寄り添い合う。
その三人のショットはナイーヴさを宿しながらも心強い。