10.冒頭のタイトルバックで初めてこの映画の原題が「Safe House」だと知る。
諜報機関の“隠れ家”であるセーフハウスの管理人(という役割を与えられているCIA職員)が主人公という設定はフレッシュで面白いと思った。
もっとそのフレッシュさと特性を生かして、セーフハウス自体を軸に物語を展開させられたなら、遥かにオリジナリティに富んだ映画になっていたかもしれない。
もはや敢えて怒りはしないが、邦題の付け方は相変わらずダサい。デンジャラスって……。
とはいえ、そういう苦肉の邦題を付けたくなる気持ちも分からなくはない。
“管理人”という設定を見せ終わってからは、ただただありきたりな逃亡劇が延々と続く。
ヨハネスブルグをを舞台にした逃亡シーンでは、独特の煩雑さとじっとりとした空気感が、切迫さを助長していたとは思うけれど、ストーリーに特筆する程の工夫が無いのでやはりダレてしまう。
デンゼル・ワシントンは、ここ数年すっかり板に付いた印象のあるでっぷりとふてぶてしいキャラクターを安定した演技力で見せてくれるが、その演技プランももはや新鮮味には欠け、彼の名優としての実力を踏まえれば、手抜き感は否めない。
彼が演じるキャラクター的には、最後までその謎めいた不穏さを貫き通してほしかったと思う。
最も腑に落ちなかったのはラストの顛末。
CIAの下級職員だった主人公は、絶体絶命の危機を生き抜き、諜報員として得難い「経験」をしたとは思う。
しかしだからと言って、蓄積された実績がまるでない主人公がラストシーンのその後を生き残れるとは決して思えない。
愛した見納め格好良く去った次の瞬間に頭を撃ち抜かれてるんじゃないかとすら思ってしまう。
まあ適度に緊張感はあるし、アクション映画としてのスピード感も悪くは無い。
暇つぶしには適当な映画だとは思う。