4.劇場内の観客の反応をロビーでリズムを取りながら聴くアンソニー・ホプキンスの
満足げな姿は、『フレンチ・カンカン』のジャン・ギャバンのようでもある。
『映画術』での、「大衆のエモーションを生み出すために映画技術を
駆使することこそが歓び」であり、「観客を本当に感動させるのは、
メッセージでも名演技でも原作小説の面白さでもなく純粋に映画そのものなのだ。」
との監督の台詞がこのシーンに体現されている。
その意味では、ヘレン・ミレンのいかにもな「名演技」臭に少々くどさも感じるが、
いずれの役者もモデルに似せる以上のアプローチを目指していて、
演劇的な楽しさに満ちている。
セロリを齧る咀嚼音や、ソファの軋む音など、
さりげなく不穏を掻き立てる音使いとその積み重ね。
装置としてのプール、水着などのドラマへの活かし方もいい。