2.ホラーとしてはつまらないと思います。
本作が描いているのは、「死」というものに向き合う登場人物です。
作中では「孤独死」にかかわる話題が登場します。
主人公が介護の仕事を目指していたり、彼女を救おうとする男性が遺品整理の仕事をしているのも、そのような孤独死を迎える可能性がある現代社会に警笛を鳴らしているからなのでしょう。
タイトルであり、作中でイメージとして挿入される花「黒百合」の花言葉は「呪い」です。
主人公が「呪い」「死」のために葛藤し、そこにはどういう真相があるのか、彼女はどう行動するのかーそこが見所になっているのです。
どうもこのことは、観客が望むものと一致していない気がします。
この映画を観に来る若い観客は、恐がれて、面白くて、驚ける内容を期待していると思います。
しかし、肝心の内容は淡々としていて、登場人物の会話シーンが長くて、そしてあまり怖くないのです。
本作の評判があまりよくないのは、そうした作り手の目指していたものとの不一致があるからでしょう。
では、心理描写を描いたドラマと言えばどうか?と問われればそれも物足りませんでした。
「孤独死」のテーマは描ききれているようには思えないし、ちょっと常識では考えられない登場人物の行動もあったりしてどうにも煮え切りません。
結果的にホラー作品としても人間ドラマとしても中途半端になっているのは残念でした。
しかし、序盤から張った伏線、徐々に壊れていく日常の描写、そして明かされる真相は面白かったです。
映画のはじめは普通とは違うカメラワークになっているのですが、そのことにも意味があります。
そして作中で一番恐ろしかったのが「日常でもありえること」というのもよかった。
恐怖描写は凡庸なものが多かったのですが、ここは唸らされました。