1.夏帆の横顔から、ピアノを弾く彼女の指の動きへ、
彼女自身の演奏をしっかりと捉える緩やかなカメラの動き。
二人の主観に可能な限り近づけんとするかのように、
お互いの肩越しの接写で切返される、二人の出会いのショット。
小高い丘の上でぎこちないキスを交わす夏帆と星野源の清々しさを
演出する、彼らを撫でるそよ風。
雨に濡れること。並んで牛丼を食べること。互いの生身の身体に触れること。
そうした接触・感触を意識した部分部分の積み重ねが丁寧でいい。
それだけに、二階へよじ登る星野と彼の手を握って引き上げる夏帆の
協働のシーンが手抜きにみえてしまい残念だ。
2人が渾身の力でベランダを乗り越える、
最も肝心な触れ合いの部分が省略されてしまっている。
誰がどういう動作をして、どうなったという流れはとりあえず解る。
が、心を動かす映画のアクションにはなっていない。
ベランダからの落下のくだりも同様である。そこが惜しい。