3.日常生活の中で自殺が“風景”として多発する極めて陰鬱とした社会。そんな中で「自殺用品専門店」を営む家族の物語。
フランス産ならではの陰湿でブラックなユーモアに溢れたアニメーションが印象的。
まず舞台作品の映画化かと思えるくらいに、ミュージカルと舞台的な演出のクオリティーの高さが光った。
きっとこの脚本と演出のまま舞台化しても成功は間違いないと思える。
自殺が蔓延する社会の中で、それを助長する商売を生業とする主人公家族の面々。
映画の序盤、彼らのキャラクター性は、悪魔的に、ある種のファンタジーとして描かれる。
しかし、そこに彼らの存在性を根本から否定する天使のような次男が生まれ、この家族の人間性があらわになる。
悪魔的な陽気さが、実のところ陰鬱とした世の中を生き抜くために彼らが選ばざるを得なかった手段だということが描き出され、このファミリーの悲しさが見えてくる。
映画の中盤、店主と自殺志願者のやりとり。
「この“面倒”にもう耐えられない」
「“面倒”とは?」
「人生さ」
自分はまだ30年余りしか生きていないが、このやりとりは身につまされる。
世界中の誰しもが、その“面倒”と葛藤をし続けていることだろう。
ただそれでも、“生き続ける”こと以上に意味深いことなどないと、この奇妙なアニメ映画は高らかに歌いあげる。
ストーリー展開は稚拙ではあったけれど、語り口そのものには好感が持てた。
店主の名前が「ミシマ」。自殺の方法にやけに“ハラキリ”を推奨し、日本刀を振り回すこのキャラクターのモデルは、完全に三島由紀夫だよな……。