3.いやー、これは「原典の、19世紀ビクトリア朝でも撮ってみたかったんだよね」というモファットとゲイティスの願い叶っての、脚本家による、彼らとSHERLOCKファンのための内輪向けスピンオフ。新作映画と思って映画館に足を運んだ一見さんは気の毒だ。
シャーロックの意識の現在とマインドパレスを行き来するという設定は、時間が交錯したり工夫もあるけどやっぱりちょっと苦しい。ドラマファンの私でも「苦労してひねり出した脚本だなあ」と思ったもんね。
だからですね、これはシーズン4を待つ間の”つなぎ”の位置づけ。ファンはこれでせめてもの渇きを癒すのです。
だってなんだか、キャストの皆もコスプレに付き合わされているかのよう。台詞までが「僕のヒゲだって挿絵画家のせいなんですよ」とはもう確信犯な脚本。この作品の正しい楽しみ方としては、ベネさんやりたかったオールバックにできて良かったね、とかハドソンさんが一番似合うなあ、とかレストレードのカツラがいまいちねえ、とか いやモリーw、全然男に見えないよ、とか身内気分で眺めましょう。
スープロデューサーがお金がかかると嘆いていただけあって、セットや調度品は凝っていてまさしく「映画レベル」の美術であります。モファットとゲイティスのお二方がはしゃいでいるのも微笑ましい。もちろん遊んでばかりいる二人ではないわけで、世界でも指折りのシャーロキアンで、優秀な脚本家でもある彼らの仕事ぶりの凄さはシーズン全シリーズを通して世界が認めているところ。彼らへの強い信頼が、シーズン4まで辛抱強く私たちを待たせているのです。こんな息抜き作品もご愛嬌。