4.モノクロームは事物の内面を写すと言われている。
情報としての色は本質ではなく表層的なもので、意外と洞察力を鈍らす。
逆説的に言えば、色の処理に使われている脳の領域を解放することにより洞察が増すとも言える。
鋭敏になった思考はじわじわと漠然と眺める客観視から共感への主観視へとたぐり寄せられ、
映像も広く写し雑多な出来事を長回しで見せ、無秩序的な現実世界を再現している。
情報量があるシーンでも色を抜くことによって色に目が奪われず、観る人をROMAの世界へいざなう。
映画は家族の絆、人の成長が丁寧に描かれている。
皮肉なことに、人間は望まなくとも不幸や困難によって成長するという普遍性があるようだ。
満たされた幸せだけだと人の絆は脆いのか、助け合いの状況の中で人の素晴らしさが明白になるのは本質なのか。
理解しなくてはいけないのかもしれない。幸も不幸も人間には必要なことだと。