1.腹芸、裏技、寝技、一筋縄ではいかないことが容易に想像できる政界に、こんな議員がいたとは素直に驚く。露出が少ないとはいえ国会での際立つ存在感は発揮されていたように思う。しかし「本当にこんな男がいたとは」がほとんど人が描く感想ではないか。映像は「この人は良い人ですよ」みたいな単純なものではなく、あくまで「なぜ君は総理大臣になれないのか」、それを観る側に淡々と意識させながら、ときに追い込んでいく。ひととおり環境と人物像を認識したところで、終盤にある慶応大・井出教授の応援演説が白眉(こんな素晴らしい応援演説は聴いたことがない)で、「なぜ君は総理大臣になれないのか」をさらにもう一段突きつけられる。庶民派を気取るあざといだけの政治家は多いが、家族も住まいも見事なまで等身大に写る。安易な広報的なものになっていないのは監督の腕なのだろう。鑑賞後、良い意味で味わったことの無い虚しさがあった。