1.監督がホラー映画畑出身の方なのは知っていたのですが、ここまで低予算ホラーの域を出ないレベルの作品とはがっかりです。ホラー映画というジャンルの中で社会的テーマを扱った作品として見れば評価できるかもしれませんが、社会派映画として見るとホラー映画的な観客を不快にさせ不安を煽るような演出が却って本筋を見失わせるノイズとしてしか機能していないように感じます。昆虫の気持ち悪さがいじめの怖さと何か関係があるのでしょうか。内容が意欲的だとしても人物描写はステレオタイプで浅薄なものでしかないです。母親は狂信的なまでにどこまでも子供の味方であり、そこに内面の葛藤のようなものは見られません。いじめや少年法にまつわる社会問題を本気で扱うならば個人と社会の関係をもっと丁寧に描く必要があるはずですが、むしろ映画の終盤になるほど大人が関わらない狭い世界へ収束していきます。あのパイ作りのシーンは何の意味があるんでしょうか。結果的に印象に残るのは凝った構図やカメラワークだけでこれで社会問題に関する理解が深まるとは思えません。