5.今年はあまりSF映画を観ていないなあと思い、Disney+で本作を鑑賞。
ギャレス・エドワーズ監督の大バジェット映画なので一定のクオリティは担保されているのだろうと、“マイリスト”に登録してから数ヶ月。なかなか鑑賞に至らなかった要因が、溢れ出る「既視感」だった。
“AIとの終末戦争”、“対立と共存の葛藤”、そして“未来の鍵を握る少女”、本作を彩る様々な要素は、過去のSF映画の踏襲の範疇を出いていないことは明らか。
ギャレス・エドワーズ監督によるクリエイティブも、彼の過去作「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」のトレース的な色合いを感じたことは否めない。
ただし、映画作品として決して面白くないということではない。
過去作の二番煎じだろうが、焼き直しであろうが、作品としての仕上がりそのものは高水準で、SFエンターテイメントとして見ごたえは充分だったろう。
全体的な世界観に対する既視感はやはり禁じ得なかったけれど、一つ一つのキャラクターの造形や、AIを含めた彼らの心情描写には、この映画世界ならではのオリジナリティがあったように思える。
特に印象的だったのは、主題となる「AI」のキャラクターたちの“人格描写”が多様性に溢れ、人類と並列の新しい“種族”としての存在性を表現できていたことだ。
人工知能としての進化を極め、人間と同じように、喜び、怒り、哀しみ、楽しむ描写が、マクガフィンであるAI少女のみならず、脇役、端役に至るまでちゃんと演出されており、彼らが「生命」を全うする姿が、本作のテーマに対する説得力として機能していたと思う。
まあこのあたりの描写も「スター・ウォーズ」のスピンオフ作品を担ったギャレス・エドワーズ監督ならではのアイデアなのだろう。
133分という上映時間はやや長すぎるし、ストーリー展開としてやや唐突だったり、逆に冗長なシークエンスもあった。全体的にもう少し映画的な精度を高めた編集がされていれば、王道SFとしてもっと高評価を得られる素地のある作品だったと思う。