1.この映画はシャーロキアンには不評だけど、娯楽映画としては一級品。コカイン中毒で妄想を見るようになったホームズがワトソンと共にウィーンへ飛んで(何故か実在人物の)ジグムント・フロイト博士と出会い、誘拐された歌姫の行方を追って活躍する。19世紀ウィーンのクラシックな雰囲気と贅沢な調度。見せ場の配分もうまく、腹黒男爵が借金のカタに歌姫(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)をトルコの大臣に売っ払おうとしていることを知った三人が一路オリエント急行で追跡し、最後には走る列車上での剣戟対決まで観られる。ニコル・ウィリアムソンはホームズ・スタイルがよく似合っているし、ロバート・デュヴァルのワトソンが他のホームズ映画みたいに馬鹿に描かれてないのもいいし(実際はこんな感じなのだろうと思う)、犬のトビーまで出てくるし、何よりも英国騎士道精神みたいなものが感じられるのが嬉しい。ジョン・アディソンのワルツ風の音楽が映画全体を振り付けていて最高。