4.壮観のロケーションとアレクサンドル・トローネによる厳かな美術が目を奪う。
そこでは太陽光や雲の形状や風や波など、ロケ撮影の特長が強調されている。
城砦上を並び歩くオーソン・ウェルズとマイケル・マクラマーの
会話と移動を延々とフォローしてゆくカメラワーク。
あるいは、遠近を強調した極端な縦構図とパンフォーカス。
要所要所での仰角アングルや、人物の表情のクロースアップの効果。
黒い闇に侵食されるウェルズと、白布に象徴される清楚なシュザンヌ・クルーティエとのハイコントラストを強調した光学効果。
あらゆるショットが舞台劇では表現し得ぬ画面効果を目指しており、
映画としての徹底した差別化が目論まれている。
自らのルーツである戯曲へ敬意を払いつつ、それをいかに映画表現するかの苦心の痕跡が全編から窺える。